突発的短編

□ゲーセン行こうぜ
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「変わってください!私が取りますから!」
そう言って100ベリーコインを5枚入れる。これで6回分になるのだからお得だ。
「見ててくださいね、絶対取りますからっ!!」
そんな事を言ってすでに5分。何度か白くまの脳天をぶっ刺しているのだがどうやらはまってしまったらしく取れない。
最後の1回、息巻いてクレーンを横に動かす。
すると不思議と周りの音が聞こえなくなった。
緊張の中ボタンから手を離し、続いて奥に動かす。
ここだ、と思いっきり離せばアームが開いた。
「……」
「……」
下りる間、2人の間に緊張が走る。
アームが白くまと台の間に入りお尻から持ち上げた。そして、そのままストン落ちたのだ。
一連の動きがスローモーションに見えた。落ちた瞬間、2人してガッツポーズして、向き合った。
「やりましたね、ローさん!!」
そそくさと白くまを取ってローさんに渡す。手に取ると以外と大きい。
「……ありがとな」
少し、頬を赤らめてそう言うから、いつもはかっこいいのにかわいいな、なんて思ってしまった。
そして大きな白くま抱えてるローさんかわいい。
「さーて、他のもがっつり取りましょうよ!ローさん他に欲しいものあったら言ってくださいね」
「あぁ、頼むとしよう」


そんなこんなで1時間弱、このゲームセンターのあらゆる景品をゲットしていった。段々上達していくのが楽しかったし、喜ぶローさんの顔が見れたから嬉しかった。
大方取りたかった物を取り終えたので、プリクラなるものに挑戦する事になった。
「え、これ全部プリクラ機なんですか?」
プリクラゾーンにはそれはもう沢山のプリクラ機があって、この中から選べと言われたので驚いた。どれも”美白””Beauty”と書かれており、綺麗な女性の顔がでかでかと貼られていて、何がどう違うというんだ。
「どれでも同じだろ、これにしよう」
手を引いて入ったプリクラ機にもしっかり”美白”と書かれていた。
『まずは背景を選んでね』
そう画面に出たのだが、私もローさんも使い勝手が分からない。とりあえず、オススメというの6個選んだ。肌の色、名前、様々な物を選ばされ書かされ、ようやく撮影らしい。
『キメ顔でいくよ〜』
「え、キメ顔?え、ちょ……」
困惑する内に『3・2…』とカウントダウンし始めるから慌てて精一杯のキメ顔を作った。
「び、びっくりしましたね」
「そうか?」
さも「俺はキメなくてもイケメンだ」と言いたげなのでやめにした。
その後もピースマーク等々、指示に従いつつ進めていった。そして、最後の1枚。
『仲良しな2人、今日は楽しかったね!』
そんな音声と共に画面には女の子2人が抱き合っている写真が。
「は?」
「レティ」
呆気に取られていると横から声をかけられ、ローさんを見ればその距離は異様に近くて。
「え……」
腰を抱かれ、唇に柔らかいものが当たったかと思えば『3・2・1』と後ろで元気なカウントダウンがしていた。
それがローさんの唇で、今まさにキスされているのだと気付いた時にはすでにカシャッ、と音がしていた。
「…」
「ちょ、ローさん、今……」
唇を離して、してやったりという顔をするローさんにレティはひたすら口をぱくぱくとするしかなかった。
「何だ?そんなマヌケな顔して」
いつものニヒルな笑みを浮かべる彼に、一瞬見惚れてしまったのは秘密だ。
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