突発的短編
□伝えられなかった言葉
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慣れ親しんだ廊下をひたひたと歩く。硬く冷たい鉄の床が足を刺す。
慣レ親シンダ?
何故裸足ナノ?
はっとして自分の身体を見る。
気味が悪い程に白い手、知らない白いワンピース、何も履いてない足。
ここは何処で何故こんなところにいるのだろう。自分の顔は?声は?
ワタシハ誰?
声が聞こえる。
泣いている、男の人。
知らない人、自分が誰かすら分からないのにどうしてかその声に惹かれる。
『こっち』
頭の中で自分の声が響く。
指差されたのは扉。
ここをくぐれば外に出られる。
『行って』
私は知ってる。
分からないけれど知ってる。
行かなければいけない。
彼が待ってる。
開け放たれた扉。
その瞬間『私』は憶い出した。
「ロー」