突発的短編

□伝えられなかった言葉
1ページ/2ページ

慣れ親しんだ廊下をひたひたと歩く。硬く冷たい鉄の床が足を刺す。

慣レ親シンダ?

何故裸足ナノ?

はっとして自分の身体を見る。
気味が悪い程に白い手、知らない白いワンピース、何も履いてない足。
ここは何処で何故こんなところにいるのだろう。自分の顔は?声は?


ワタシハ誰?




声が聞こえる。
泣いている、男の人。
知らない人、自分が誰かすら分からないのにどうしてかその声に惹かれる。
『こっち』
頭の中で自分の声が響く。
指差されたのは扉。
ここをくぐれば外に出られる。
『行って』
私は知ってる。
分からないけれど知ってる。
行かなければいけない。
彼が待ってる。


開け放たれた扉。

その瞬間『私』は憶い出した。












「ロー」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ