それでも私は2

□弟子入りしよう
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一年半ぶりに見る屋敷は相変わらず奴隷ばかりがいた。殺意と羨望と憎悪の目線で溢れかえっていて息が詰まりそうになる。
風呂に入ろうと部屋を出ればそそくさと無言で付いてくる使用人。こうして髪を誰かに拭かれるのも久しぶりだ。
食事も小綺麗に美味しいところだけを使った贅沢なもの。確かに美味しいけれど、あの海で食材を余すことなく使い皆と食べた料理の方がはるかに美味しかった。
レンとレイがいないと話し相手すらいない。
一度外の世界を見てみると、ここでの生活が異常だとよく分かった。
母は私をどうにか普通の天竜人にしたいらしく月に一回の人間オークションに連れて行かれるようになった。初めて自由に見たシャボンディ諸島とは大違いで、皆ヒザをついてその場をやり過ごす。レイさんやシャッキーさんに見つからないように髪と黒いベールで顔を隠してやり過ごした。
楽しい訳が無い。料理も作らないし洗濯も無ければ甲板磨きも、剣の鍛練も無い。ここには、誰もいない。今度はレンやレイもいないからまた一人ぼっちになるし、暇で暇でしょうがない。
する事といえば毎日ローさんからもらったペンダントとイヤリングを眺めては今ごろどうしているか、と想いを馳せるだけ。そういえば、ローさんがついに二億になった。うれしい反面、私のせいでもあると思うと少し…。
また私は本の世界に逆戻りだ。私の好きだった冒険記を読んでみた。でも、私のした冒険の方がはるかに面白い。
ああつまらない。
こんな毎日が死ぬまで続くのだろうか。


だから私は、海軍本部に出かけた。もちろん親には内緒で。
「センゴク元帥、お願いがあります。私に剣の稽古をつけてください」
屋敷に帰って一ヶ月が経った今日、私は弟子入りを直談判した。
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