HQいろいろA
□グッドマナー!!
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「もうこれくらいでいいだろ」
「もっとちゃんと磨けよ。段々1個1個が早くなってきてんぞ」
鋭い指摘に影山はぶすっとそっぽを向いた。口の中でもごもごと喋る。
「だってよ……絶対武田先生に担がされてるだけだろ……」
「なにが?」
「グッドマナー賞なんて、普通にしてりゃ誰でも獲れるんだ……っ、 こんなボール磨いたって誰も見てねえんだよ」
言い草にムッとし、手を休めず日向は言い返した。
「そんなのわかんねーじゃん」
「お前はそればっかだな」と、今度は影山が日向の痛い部分を突く。
「価値のあるなしの区別くらいつけろよ。やってみなきゃわかんねーのはどんなことだってそうだろ、その中にはこういう無駄なものも含まれてんだよ」
「だから、無駄かどうかもわかんねえだろって、言ってんの!」
「この、わからずや!」
「な、なんだ!やんのか!────」
戦闘体制に入ったまま固まった日向に、同じくやる気満々だった影山は気勢を削がれてしまった。
「…………?どうした」
「しない」
宣言し、どかっとその場に座り込む。
「あ?なんだよ……」
「喧嘩は、バッドマナーだから、しない」
黙々とボール磨きを再開する。影山はしばらく無言で睨み下ろした。突っかかろうと思えばできる。が、バッドマナー、言われてみれば、そうなのだ。ここで自分が突出してルール違反をしてはならない気がした。
「ちっ」
結局、やりきれない気持ちを抱えたままボール磨きをするしかないのである。
倉庫の扉が開き、入ってきた月島と山口は二人の姿に目を丸くし、すぐげんなりした顔になった。
「なんなわけ……あっちもこっちも」
「今日なんかあるの?」
「聞いてよ山口。俺と影山とノヤッさんと田中さんで、グッドマナー実行部隊に選ばれたんだ」
山口は口を半開きにして、ぽつんとまばたきした。
「グッドマナー賞。うち狙ってんだ」
「そう!ぜってー獲るから!」
「冗談よしてよ」
こらえきれずに月島が吹き出す。
「メンバー見てからかわれてるんだってわかんないの?どう見ても素行が悪いからマークされただけじゃん」
「そんなことない!武田先生俺らに素質があるって言った!」
「まああの先生が?人をからかうなんてそんなことはしないと思うけどさぁ」
腰に手を当て、眠そうな声で月島は磨かれたボールを1つ取って指先で器用に回転させた。
「間違いなく君たちは期待されたんじゃなくて、期待できないからおだてられたんだろ。要は懐柔されて喜んでるペットってこと」
「ペット────!!」
繰り出される口撃にあちこち撃たれ、日向はよろよろと後ずさった。
「言われてみれば、変なメンバーだ……」
「でしょ」
その様子を黙って見守っていた影山が前に出る。月島の手からゆっくりとボールを奪い取ると、雑巾で一撫でした。
「だからって。真面目にして悪いことなんかねえだろ」