HQいろいろA
□グッドマナー!!
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「みんな、ちょっといいかな」
放課後の部活に行く直前、日向と影山は武田に呼び出された。
「なんかあったんですか?」
「いいからいいから」
詳細も知らされないまま職員室に導かれる。入り口で田中と西谷に出くわした。
「ああ、お待たせ」
武田が二人に片手を上げる。どうやら偶然による鉢合わせではなく、彼らも武田に呼び出されたようだ。
「どうしたんだよ武ちゃん」
「まあまあ、入って入って」
職員室という空間はどうにも居心地が悪い。自分達を管理する大人の空間は何もしていなくても叱られてしまいそうだ。武田の後に続き、彼のデスク前で1列に並んだ。
「実は、君たちに頼みたいことがあります」
「頼みたいこと?」
田中が深く眉間にシワを寄せる。日向ははたと閃いた。「わかった!」と即座に手を上げる。
「便所掃除!」
「なんでだよ!」
1秒もしないうちに影山の突っ込みが入る。
「だって俺よく行くもん」
「それはお前だけだろ!一緒にすんな!」
「お前変なの。ウンコしねーの?」
「するに決まってるだろ毎日絶好調だ!」
「あはっ、ならいーじゃん」
「馬鹿、こういうとこで下ネタやめろ」
静かな口調で、田中に注意される。堂々たるシモの話題に武田はあはは……と愛想笑いで濁した。
「じゃなくて、今度の春高予選で是非取って貰いたい賞があって、君たちに担って貰いたいんだ」
────春高予選の、賞?
「ベストセッター賞は任せてください!!」
影山が突然前へ出る。丁度同じことを考えていた日向も負けじと押し返した。
「俺も俺も!取ります取ります!俺もMVP取りますよううせんせええええ」
「その前に、俺のベストリベロ賞だな」
西谷は得意気に胸を反らした。
「うほー!!ノヤッさんは!絶対獲れますよ!」
「翔陽!お前って奴は!お前って奴はよう!!」
「盛り上がってるとこ悪いんだけど、違うんだ」
「え?」
抱き合っていた日向と西谷は、すっと身体を離す。
「じゃなんなんだ」
「プレーで貰う他に、もう1つ賞があるのを知ってるかな?」
四人は目配せをしあった。代表して影山が「もしかして、グッドマナー賞ですか」と聞いた。
「そう!」
武田の指が嬉しそうに鳴る。
グッドマナー賞なんて日向は知らない。他二人を見るに、自分以外はみんな知っているらしい。呆けた顔で右と左を見比べた。
「なに、それ」
「マナーが良かったチームに送られる賞だ」
影山の説明は想像の範囲内だった。
「そう。試合を通して挨拶が出来たりとか、ごみを出さなかったりとか、試合前後の行動、統率、試合外のことで優良なチームに送られる賞なんです!」
興奮気味に武田は言ったが、言われた方はヘエーとしか言いようがない。
「それを俺らが獲るんすかぁ?」
と、田中が言うまで誰も気の利いたことが言えなかった。武田が力強く頷く。
「僕も最近その賞の存在を知ったんだけどね」