HQいろいろ@
□最強、ウシジマくん
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勝負に必要なものは一体なんだろうか?
天性の能力、努力、仲間と────そして、公平な審判。
「始まるな」
舞台側の2階席、手すりにずらりと黒いジャージが並んだ。烏野高校のテーマカラーである。みんな思い思いに昼飯片手に眼下のコートに注目した。今から王者白鳥沢の試合が始まる。相手方には失礼だが、1セット目は30分もからないだろうと予測される。
審判とラインズマンは会場側が用意した専門の審判である。得点は手の空いたチームが順番で担当した。
一世一代の晴れ舞台と言わんばかりのオーラを背負ってきた烏野と違って白鳥沢は落ち着いている。似合いもしない白とピンクのユニフォームに身を包み、なんということもない顔で佇んでいる。主にそういう態度で構えているのは牛島若利なのだが、彼が頑とすることによってチーム全体が引き締まって見える。こうして直に見ると、あんなに強かった青葉城西さえもなるほど、少し軽く見えた。
日向は大きな瞳を皿のようにして首を伸ばした。
「きー、なんか俺らじゃねえのに武者震いだな」
田中の言葉は一理ある気がした。
相手方は見たこともない学校だった。落ち着いて見えるが彼らの内心は穏やかなんてもんじゃないだろう。
静かにホイッスルが鳴り、白鳥沢からのサーブ。普通にカットミスしてボールがこっちまで飛んできた。山口が無言で打ち返した。相手のベンチから「あー……」とか「ドンマーイ!」とか聞こえる。
「強い────って。実感する前に終わるな」
果たして、結果は烏養の言葉通りになった。1セット目は30分どころか20分も満たないうちに終わったのである。行こう、と大地が見切りをつけた。
「アップしに行くぞ」
これ以上見ても意味がないことを示唆していた。他人事ながら、ちくりと胸が痛む。アレがもし自分だったら、よそから「もういい」と言われるような試合だけはしたくないもんだ。
「日向、遅れるぞ」
最後に警告して影山が階段を駆け上がる。日向はなんとなく未練を持って眺めていた。あと、このサーブだけ見たら────
「あれ?」
「おい、置いてきぼりだ」
戻ってきた影山にここぞとばかりに指差して注目して貰った。
「今、アウトだった」
「え?」
「サーブ。アウトなのにインになった」
「ジャッジミスだろ。相手ラッキーだったな」
サービスエース扱いになって、もう一本。
「またアウトかくそっ。下手っぴ」
暴言を吐いて影山が腕を組む。ボールはラインぎりぎりだが確かに外側に落ちた。さっとラインズマンが旗を振るも、ジェスチャーはインを示していた。
「!?」