HQいろいろ@

□愛と勇気
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「ん?」


 急に前へ出てきた谷地を、及川はしげしげと見下ろした。


「……チーズ?」

「チーズ!?」

「ごめんごめん。女の子にチーズは失礼か。君はそうだな……」

「チーズなどという大役は恐れ多いでっす!」


「そっち!?」


 自販機に行っていた3年生組が戻ってきた。階段に片足をかけ、混ざる及川が妙に親しげに見えたらしい。菅原が目を丸くする。


「なにやってんだ?」


 その顔を見て、日向は「あ」と口を開ける。


「食パンマンいた」


「は?」


「おおそうじゃねえか!」力を得た西谷が菅原に迫る。「菅原さん!食パンマンの称号受け取ってください!」


「アニメの話?でも俺結構ばいきんマン好きなんだよねー」


「悪に魂売ってどうするんですか!!」


「悪って……アイツはアイツなりにいいとこあるんだぞ〜」


「確かに爽やかくんの説は否定しないけど」


 腕組みをする及川は、さも面白くなさそうに唇を尖らせた。


「ドキンちゃんがいないんじゃ話にならない」


「及川さんにだっていないじゃないですか」


「うるさい飛雄!お前は一生工房でチビちゃんの為に顔作ってろ!」


「あ!こんなところにいやがった!」


 のしのしと岩泉が階段を降りてくる。及川の襟首を掴んで問答無用に引っ立てた。


「ちょっと目離した隙に、相手チームに絡んでんじゃ、ねえ!」


「どうーだ見たか飛雄!岩ちゃんが俺のドキンちゃんだもんねー!ベーッだベーッだ地獄に堕ちろ!」


「誰がドキンちゃんだ!」



「最後にすげー悪あがきしたな……」


 田中が呆れたようにぽつりと呟いた。


          ○

 宿敵青城との決着の時がきた。ゴールはここではない。お互いに、もっと先へ行く為に、中ボスにかかずらってる暇はない。


「行くよお前ら」


 肩を組み、及川は仲間内を見渡した。


「勝って上に行く。カビるんるん卒業してやろう!」


「か、かびるんるんですか?」


「愛と勇気だけが友達じゃないってことを証明してやる!」


 ホイッスルが鳴る。西谷が上げたワンカットが綺麗に影山に帰る。日向は全速力で駆け抜けた。



「俺にトス、持ってこおおおおおおい!!」


 踵を蹴りあげ、影山は身体を捩ってボールを飛ばした。



「日向!新しい顔だ!」


『それいけーーーーー!』


「 パァーーーーーンチ!!」



 しばらく黙って見守っていた烏養が、ぼそり、と潔子に囁いた。


「…………なんか、流行ってんのか?」


「はい、ちょっと」




おわり。
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