HQいろいろ@

□愛と勇気
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 春高予選の熱気に満ちた会場の空気にも慣れてきた。が、ベンチに座ってよその試合を見る時間というは、どうにもアドレナリンが抜けていきそうで怖い。
 ぼーっとしていた日向の横に西谷が座った。「俺さ」と 大真面目に切り出す。


「どうしたんですか?」


「昨日ひょんなことからあんぱんマン見たんだわ」


「…………へえー」


「すげえカッコ良かった」


「ふう〜〜ん」


「でも俺の中で輝いてたのは、あんぱんマンじゃなくておにぎりマンだった」


「ほほー」


 相槌を打ちながら頭の中でキャラクターを思い浮かべる。

「バタ子さんは潔子さん。俺は、バタ子さんを救うおにぎりマンでありたい」

 なるほどそういうことか。一見地味だがいい仕事をする おにぎりマンを好む辺りが西谷らしいと言えばらしい。でもどちらかと言うと髪型的に田中の方が似合っている気がする。


「翔陽、お前ならなにになりたい?」


「 俺?俺は、主人公のあんぱんマン!」


「なるほど」


 とん、と日向の頭にボールが乗っかった。ベンチ横の階段に立つ、白とミントグリーンのストライプ。

 及川徹が笑いながら見下ろしていた。


「あー!」

 日向と西谷は一斉に立ち上がった。及川を指差し、西谷が喚く。


「出やがったなばいきんマン!」


「ばっ……」


 途端に顔がひきつる。


「おかしいだろっ。俺なんかどう見たって食パンマンじゃーん!モテるし!」


「うるせえ!敵だからばいきんマンだ!もしくはばいきんマンが白鳥沢でお前はカビるんるんだ!」


「…………カビ…………ぶっ殺す」


「ノヤさん。大王様、めっちゃ怒ってる」


「ほっとけ」


「…………ふん」


 まだ少し頬に痙攣を残しつつ、及川はどうにか立ち直った。


「そういうチビちゃんは、 飛雄の投げる顔がなければ戦えないあんぱんマン……よく似合ってると思うなあ」


 ムッとする日向の後ろで影山が「俺、カレーパンマンの方が!」とジャムの権利を放棄した。


「うるせーなあ!あんぱんマン一人だって、ちゃんと戦える!」


「そう?少なくとも顔の交換しまくってるの、彼以外に見たことないなー……」


「う〜〜くそ〜っ」


「でも揺るぎない主人公だと思います!」
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