HQいろいろ@
□愛と勇気
1ページ/3ページ
春高予選の熱気に満ちた会場の空気にも慣れてきた。が、ベンチに座ってよその試合を見る時間というは、どうにもアドレナリンが抜けていきそうで怖い。
ぼーっとしていた日向の横に西谷が座った。「俺さ」と 大真面目に切り出す。
「どうしたんですか?」
「昨日ひょんなことからあんぱんマン見たんだわ」
「…………へえー」
「すげえカッコ良かった」
「ふう〜〜ん」
「でも俺の中で輝いてたのは、あんぱんマンじゃなくておにぎりマンだった」
「ほほー」
相槌を打ちながら頭の中でキャラクターを思い浮かべる。
「バタ子さんは潔子さん。俺は、バタ子さんを救うおにぎりマンでありたい」
なるほどそういうことか。一見地味だがいい仕事をする おにぎりマンを好む辺りが西谷らしいと言えばらしい。でもどちらかと言うと髪型的に田中の方が似合っている気がする。
「翔陽、お前ならなにになりたい?」
「 俺?俺は、主人公のあんぱんマン!」
「なるほど」
とん、と日向の頭にボールが乗っかった。ベンチ横の階段に立つ、白とミントグリーンのストライプ。
及川徹が笑いながら見下ろしていた。
「あー!」
日向と西谷は一斉に立ち上がった。及川を指差し、西谷が喚く。
「出やがったなばいきんマン!」
「ばっ……」
途端に顔がひきつる。
「おかしいだろっ。俺なんかどう見たって食パンマンじゃーん!モテるし!」
「うるせえ!敵だからばいきんマンだ!もしくはばいきんマンが白鳥沢でお前はカビるんるんだ!」
「…………カビ…………ぶっ殺す」
「ノヤさん。大王様、めっちゃ怒ってる」
「ほっとけ」
「…………ふん」
まだ少し頬に痙攣を残しつつ、及川はどうにか立ち直った。
「そういうチビちゃんは、 飛雄の投げる顔がなければ戦えないあんぱんマン……よく似合ってると思うなあ」
ムッとする日向の後ろで影山が「俺、カレーパンマンの方が!」とジャムの権利を放棄した。
「うるせーなあ!あんぱんマン一人だって、ちゃんと戦える!」
「そう?少なくとも顔の交換しまくってるの、彼以外に見たことないなー……」
「う〜〜くそ〜っ」
「でも揺るぎない主人公だと思います!」