HQいろいろ@

□恋患い
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 突然諦めモードに入った日向は影山を残して帰ろうとした。


「待てよ」


 なにか言おう。いつもひたむきで一生懸命なこいつになにか言わなければ。恋愛とか知らねーよ、勝手にしろ。恋する野郎の面など見たくない、エトセトラエトセトラ……。


「諦めるのか」


「この気持ちは、墓場まで持っていく。お前も校庭に穴掘って告げ口したら許さねえからな」


「訴えてみなきゃわかんねえよ。見たとこ谷地さんはお前に悪い感触なんか抱いてない。むしろちょっと好きっぽいだろ」


「ほんとか?」


 勢いよく日向が振り返る。よし、活力みなぎってきたか。


「ああホントだ!」


「俺本気にするぞ!」


「しろ、俺を信じろ!」


「よっしゃー!影山先生!」


 調子に乗ってハイタッチしようとした手を真っ向から叩き落とした。文字通りビターン!と床に這いつくばる。


         ○

 翌日、影山御用達の自販機の前に谷地を呼び出した。怖い顔で(緊張してただけ)教室に入ってきた影山を見た仁花はすくみあがり、大人しく従ってきた。ちょろいもんである。


「あれ、日向」


 柄にもなくもじもじする日向をすぐに見つける。

 日向は今にも嘔吐しそうなほど青白かった。カタカタと身体が震えている。中々話し出さない背中を殴ってやった。


「うぉぼ!」


「日向どうしたの?顔色すっごい悪い」


「あ、あの、さ」


「?」


「やべえめっちゃ胸が痛い…………」


「?なんでだよ。今他の男子誰も……」


「あいでででで……」


「日向!」


「日向!?」


          ○

「あああいでえええ!!死ぬ!かあちゃーん!!」


「魚の小骨くらいしっかり取って食えよ日向ボゲ!!」


「影山くん今それを言っても!」


 担架で運ばれる日向、並走しながら叱り飛ばす影山、追いかける仁花。三人の阿鼻叫喚は遠ざかって救急車の中に消えた。





おわり。
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