HQいろいろ@
□大地ガエシ
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「帰りに坂ノ下寄って、なんか買って行こうぜ」
会話をちゃっちゃと終わらせ、西谷がボールを取る。ドリブルをさせながら真っ先にコートの真ん中に走っていく彼の背に、みんなでばらばらと続いた。
○
烏野高校の近辺はどちらかというと田舎の雰囲気に近い。コンビニやショッピングセンターの代わりを担うのは、昔懐かしい空気漂う商店やスーパーマーケットの類いであった。部活帰りの学生たちはここで家まで待てない空腹を満たしていく。
今日は部活を早めに切り上げて大地の家に行く。事情を知っている烏養はぞろぞろ入ってきた面子を見て「おう」と片手を上げた。
「烏養コーチ。今日はすいません」
「いいよ。俺もたまには夕方の店番しなきゃだしな。それより澤村に無理すんなって伝えといてくれ」
「はい」
烏養とやり取りする菅原の後ろでは早速土産物の物色大会が始まっていた。
「風邪にはやっぱりアレかなあ」
西谷が真剣な顔で山口を振り返る。
「どれですか?」
「アイス」
言って、山口の目先にアイスを突きつける。ええ?と山口の顔がひきつった。
「余計風邪ひきません?」
「とか思うだろ?思うだろ?でも俺昔風邪ひいた時これ食ったら治ったんだって」
山口の背後に立つ月島がのっそりと上から覗いた。
「…………それっていつの話なんですか」
「………………」
視線を明後日の方へ向け、指折り数える。最後の指を上に跳ね、西谷はパッと顔を上げた。
「幼稚園だ!!」
「あー…………」
「もうそのソース信用できない賞味期限切れですってー……」
「あ?ソースじゃねえアイスだ!」
「じゃなくてー……あ、もういいです」
「あ!月島今お前バカにしたろー!」
○
お菓子の棚の前でヤンキー座りする日向の横に、大きな足が立った。旭である。思案する日向に「いいのあったか?」と穏やかに聞いた。
首だけねじ曲げ、首を横に振る。
「旭さんはなに買うんですか?」
「俺?俺とスガは買わないよ」
「ええっ」
「そういうのすると、お互い気味悪いって言うか、そういう関係」
不器用に顎をかく。わかったようなわからないような顔をする後輩に、重ねて聞いた。
「もし影山が風邪でぶっ倒れても土産物にこったりしないだろ?」
勿論だ。これはわかりやすい。日向は大きく首を縦に振って頷いた。
「カピカピの冷えピタくらいなら、あげてもいいです!」
「陰湿なんだよテメーは!」
「ぐわっ」
横から鞄が飛んできた。
「おいおい……でも影山もそうだろ?」
「はい?」
日向の頭を上から押さえつけつつ、影山は可愛い後輩の顔を作ってキョトンと、旭を見る。こいつはいつも先輩の前では従順な後輩に変身するのだ。現に、押さえつけられる日向の頭上では「背伸びるな背伸びるな……」というひけを取らない陰湿な呪文が聞こえてくる。