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□お風呂が怖い
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「んん?」

 風呂上がりの黒尾と研磨が並んで廊下をぶらぶら歩いていると、前方から烏野の軍団がやって来た。全員タオルやら着替えやら抱えて一心不乱に浴場を目指している。


「なんだ?」

「さあ……翔陽。お風呂入れるようになったんだ」

「おい、烏野は全員で入るのか」

『おう』

 ガンを飛ばし、声を唱和させ、まるで軍隊の行進がごとく足並み揃えて去っていく。一番最後を歩いていた仁花がペコッとお辞儀をしていった。

         ○

「ううー嫌だーこの上みんなの前でケツを晒すなんて我慢できるかあ〜」

「ああ?」

 脱衣場でごね出した日向に影山のこめかみがひきつった。

「誰のお陰でこんなことになったと思ってんだ。ケツが青かろうが黒かろうが汚物に違いはねえだろとっととスッポンポンになっちまえ!」

「ぎゃー!!ちょっとは俺のプライドも考えてくれよ」

「そんなもんあるか!」

「ねえこれ、どうしてもみんなでやらなきゃ駄目なの。僕もう部屋に帰っていい?」

「はい、行くよー田中ー。1、2」

 日向より一足先に、ジャージを膝下まで捲った菅原に導かれた田中が、恐る恐る浴室に足を踏み入れる。

「うう、スガさん、こええっす」

「びびりかよ!らしくないぞ」

 ぽんっと景気づけに肩を叩いたらそれだけでびくついて、田中は足を滑らせた。

「わっ、ま、がっ」

 右肩に田中の全体重を一身に背負い、菅原はどうにかケンケンの状態で踏み止まって────長くは持たずに後ろへ倒れた。


 足元では西谷が乾いたタオルでぬるぬるの床を吹いていた。じんわりと迫る影にふと顔を上げると、菅原の背中が迫ってくる。

「ううわ」

「西谷ー!」

 飛び出そうとした旭の背後では、影山に急かされた日向がぶつかってきた。


「押すなよ、押すなよ、絶対押すなよー!」と叫んで前のめりに倒れていく旭。頼る場所をなくした日向が影山のシャツを掴み、倒れていく影山の腕を咄嗟に掴んだ月島が共倒れ、さすまいと月島の腰にしがみついた山口でどうにかなるはずもなく、最後に大地が引っ張り込まれ、浴室の扉は閉じられた。



          ○

 翌日。体育館に烏野の姿はなかった。潔子と仁花の二人が、審判を手伝ったりする程度である。


「烏野は?」

 口々に尋ねられ、二人は申し訳なさそうに首を振った。
 メンバーは、全員うつ伏せで一列になって寝ている。

「うう……ケツ、いてえ」

「ボゲ日向……」

「なんか喋ると……尻に響く……」


おわり
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