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□行こう!Vリーグ!〜前編〜
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ピピーッ
ホイッスルの音に反応する。振り返って、寂しくなった。これは自分じゃない誰かの為に鳴らされたもの。さっきまで入ることが許されたコートにはもう入れない。
遠くに感じるんだ。
「お前らは本当によくやった」
烏養が労っても少年たちの顔色は冴えない。無理に誉めなくていいですよ……という珍しく消極的な気配すらある。普段は強気で弱味を見せたがらない癖に、なんだかんだすぐに顔に出る後輩たちが可愛くて烏養は一人で笑った。
「そんな顔すんな。青城相手にあそこまで戦えたら、誰がどう見たって大健闘だ」
及川に負けた、青城に負けた。ご飯を腹一杯食って全てを流せたかってそんなわけがない。
「勝ちたかった……」
「いつまでも言うな!しょうがねえんだ」
みじめったらしく日向が人差し指同士つつき合わせた。日向の場合は特に自分のスパイクがドシャットにあっての敗北なので悔しいのだ。
「頑張ったお前らに、俺と武田先生から御褒美がある」
「御褒美?」ちょっと色めき立つ。本当にわかりやすい連中だ。武田と烏養はニッと笑い合い、武田が前に出た。
「なんと!Vリーグの観戦チケット!これを見てプロの気分に浸りましょう!」
「う……おおおおおおおおおおおお!」
思った通り、さっきまで鬱っぽかった奴等が軒並みハイになって迫ってきた。
「すげえ、すげえ、先生すげええ!見たい!行きたい!」
「日向くん……落ち着いて」
どうどうと宥める武田に迫る日向を押し退け、影山が前に出た。
「俺にください!こいつは多分プロの試合見てもスゲーしか言わないし、だから!」
「なんだと!?そんなことねえしちゃんと見るし!滅茶苦茶勉強するしー!」
「事実だろ!」
「待てお前ら喧嘩すんな」
田中が宥めたが二人は全く聞く耳を持たない。それどころか、小突き合いまで始める始末である。
「んーふーふー」
「田中、よせ」
バキバキ指を鳴らし、シメる気満々だったそれは、大地に止められてしまった。
「日向と影山もやめろ。行きたい気持ちは、みんな同じだ。だから間を取って、キャプテンの俺が行く」
「そうだぞ!お前ら、大地さんの言うとおりに────って、うん?」
「大地。それじゃあ日向たちと言ってること変わんないぞ?ここは、青城戦でまさかの輝きを見せた、俺が行く」
「す、スガさんまで……」
「くだらない」
豹変した3年生に恐れおののく田中の後ろで、月島は小さく吐いた。気だるい視線を一同に投げかけ、眼鏡をくっと押し上げる。
「……背の順でいいじゃん」
「そんなのツッキーが勝ちに決まってんじゃん!」
「だからそう言ってるんだけど」