HQいろいろ@

□小耳に挟むな最後まで聞け
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 部室でなにやら3年生が盛り上がっている。2年生グループはまだ体育館におり、今日の体育の授業内容について話し合っていた。ちらっと小耳に挟んだ限りだと、マット運動が出来ない女子にどうやってエロに見られないように教えてあげるかとか、そんな話だった。



 先輩の話に耳を傾けつつ1年生は片付けに勤しむ。


「スガ。今年どうする?お前、なにか考えてる?」


 大地の問いかけに菅原は脱いだTシャツを広げながら首を振った。


「全然。他のクラブに聞いたらさ、結構張り切っちゃってるんだよね」


「俺たちは去年まで全部先輩たちが考えてくれてたし、ユニフォーム着て話聞いてるだけだったもんな」


 明後日に学校全体で行うクラブ紹介を控えている。運動、文芸に限らず、体育館に集まってそれぞれの部活の特徴や活動を紹介するものである。



「サッカーはリフティング披露するって、言ってた」


 俺もスパイク打ってやろうかな、と旭がにこにこ言った。途端に二人から警告音を鳴らされる。


「怪我人が出るからダメ」


「そうだそうだ。殺人クラブなんて御免だからな」


「そ、そんなあ……俺ちゃんと狙って打つし」


「まあ確かに」落ち込む旭をうっちゃって、大地は腕を組んだ。「3年生の有り難い演説だけじゃつまらないよ。今年は下の奴らも含めてなにかパフォーマンスしたいところだな」


「パフォーマンスか……」


 一斉に上を向く。真っ白の天井にもくもくと妄想が広がった。


 ──────以下妄想────


「それでは 、バレー部の皆さんお願いします」


 真っ暗になる体育館、ざわつく生徒。颯爽と飛び出すバレー部。


「苦しいときは、俺を呼べ!孤高のcaptain……澤村大地、推参(キメッ)」


「控えと言っちゃあ怪我するぜ。悲哀のセッター……菅原孝支、参上(キメッ)」


「心はガラス細工でも、鋼の肉体脅威の強面……キン肉マンエース東峰旭!登場!」


 ──────────────


 大きな笑い声に1年が振り返る。彼らは目を丸くしたが、なに笑ってるんですかと聞くのも野暮だと思ったのか、背中を向けた。


「旭、お前長いよ〜〜!」


 菅原が涙を流して旭の肩を叩く。旭は照れ臭そうに頭をかいた。


「そっか?いいと思ったけど」


「しかも登場って言い方がこの上なくダサい!」


「大地まで!はいはい、俺はセンスないよ」
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