HQいろいろ@
□東洋の美魔女
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「月島。……すみません、マコ先生」
「いやいいってことよ。さてさてー……?アタシも強いチームならいくらでも見てきたからね〜……アンタたちの実力が果たしてどんなものか……乱打でもして貰おうか」
「あす!」
烏養が決めた基本的スタメンが入り、反対側を補欠が埋める。乱打とは試合形式ではあるが相手側に人が足りないことも多く、一般的に点数はつけられない。
「おい」
その場跳びをする日向に影山が耳打ちする。
「アレやんぞ」
「へあ。神業速攻?いきなり?」
「先生俺たちのこと馬鹿にしてる。俺たちがどんなものか、まず先生に知って貰わないと」
「それもそうだな。よし、一本持ってこい!」
縁下が打ったサーブを西谷が完璧なフォームでカットし、決まりごとのように影山に運ばれる。ふっ、とわずかに踵を浮かした影山の背後を黒い物体が疾走する。
「いきなりアレか!」
相手のブロックなぞ間に合う筈もない。一瞬にして影山の手から離れたボールはどこをどう伝ってか、バン!と相手側コートをバウンドした。
────うん、今日も綺麗に決まった!
「こら!!」
マコの叱責が響く。ガッツポーズもそこそこに、一同ぎょっとしてマコを見た。
つかつかと接近し、マコは影山の胸ぐらを掴んだ。
「ボールを投げるな!」
は?と言いたげに影山は片眉を跳ね上げる。
「今上がったボールを掴んで相手コートに投げたろう!」
その言い草が気に入らなかったのか、影山は力任せにマコを振り払った。
「俺はちゃんとトス、上げてます!」
「嘘をつくな!」
そんなやり取りとは違う世界で、日向は別のことを考えている。
「すげー……影山! やったな!」
「あん!?」
「先生も見えなかったんだよ! 俺たちの速攻!プロも認めたってやつ? ボールが消えたように見えたんだ! びゅーんって!」
一緒に炎上してくれれば怒り甲斐もあるというものだが、日向が好意的解釈をしている以上、影山はそれより先はなにも言えなかった。自分一人プンスカするのはみっともなくもあり、こういう考え方が出来たらいい。とも思えたからだ。
「……ちっ」
「よーし、休憩だ!」
マコの号令に「え?もう休憩?」と首を傾げつつ、皆はドリンクに走った。
○
「水をガブガブ飲むな!!」
またマコの怒声が聞こえた。
「休憩中に水を飲んではいけない!アタシらの時代はねえ……いや、いい! 休憩は終わりだ! とっとと片付けてウサギ飛びだ!」
「ウサギ飛び……?」
「なんか前時代的だな……」
負担が大きく、近年ではなんの体力アップにもならないとされるウサギ飛びが始まった。
「ほれ、頑張れ」
「うわ!」
通りすぎる直前、なにかが自分の尻を撫でた。大急ぎでスピードアップし、日向は前をぴょんぴょんしている影山まで追い付いた。慌てて報告する。
「ケツ! 俺マコ先生にケツ触られた!」
「……うるせえな」
「え?」
「ケツ触られたくらいで騒いでんじゃねーぞ」
どうやら影山先生の機嫌は下り坂らしい。完全に目が座ってしまい、なにかブツブツ言っている。
「お前」ケツのことは忘れ、日向は呆れた声をだした。「速攻理解されなくて怒られたからってふて腐れるなよー」
「わかってるなら話しかけるな!」
「わわ、ごめんごめん」