HQいろいろ@
□東洋の美魔女
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「集合ー!」
いつも通りの時間、いつも通りのメンバー、いつも通りの1日が始まろうとしていた。ただ1つ、いつもと違うのは……。
「おお?」
目を丸くして、日向はじいっと武田の横に立つジャージ姿の女性を見つめた。
なんの変哲もないブルーと白のジャージ。下の部分は先に行くにつれ細くなって足首までしかない。白髪頭をポニーテールにした女性はかなり歳を召されていると思われる。
ぽかんとする部員に武田は子供のような笑顔を見せた。
「こちら、用務員のトヨノ・マコさん。残念ながら今日は僕は会議があって烏養さんも来られないそうなので、バレー経験があるというトヨノさんに見て貰うことになりました」
おおーっ、と感嘆の声が上がる。なるほどただ者ではない気配がしていた。大ベテランに間違いなしだ。
烏野の用務員にまさかこんな逸材がいたとは……。
「じゃ、トヨノさんお願いします」
「あいよ」
しわがれた声で返事し、トヨノは腰に手をあてた。
「あー、早速だが始めよう! その前に自己紹介でもしておくかね。アタシはトヨノ・マコ! 年齢は38歳だ!」
!!!?
「うっあ」と、澤村がなにか言おうとして失敗した。38?まさか!どう見ても還暦は突破していそうじゃないか。
「彼氏募集中ダヨ」
ばちんとウィンクで締める。「だ、大地!終わったみたいだぞ!」菅原の囁きでようやく我に返り、澤村はいつもより大きな声で挨拶した。
「よろしくお願いしまーす!」
○
「取り合えずポジションの確認でもしとくか」
マコの言葉にいち早く反応した日向が目一杯ジャンプした。
「はいはいはーい! 日向翔陽! ミドルブロッカーです!」
「セッターの影山です! よろしくお願いします!」
「ウィングスパイカーの東峰です。ど、どうも」
「リベロの西谷ッス!」
意気揚々と自己紹介が続いたが、そのうちマコの表情がおかしくなっていることに気付いた。顎に指を置いて深く考え込んでいる。
「どうかしましたか?」
「いや……アンタたち。まだるっこしい言い方をするもんだねえと思ってさ! つまりは────」
「ぎゃ」
日向の襟首を掴んでネット際まで引きずる。
「こういうことだろう!? あんたはライトレシーバー! そしてあんたがセッター、あんたはライトアタッカー……そしてあんたがワンポイントブロッカーだ!」
「……違います」
違います……という小さな声がさざ波のように広がる。
「レフトアタッカーとかライトレシーバーっていう言い方、小学生のとき以来だな」と旭が懐かしそうに語る。
「少年団専用の固定ポジションって感じですもんね」と西谷が受け継ぐ。
「あれ?でも東洋の魔女……いや、違ったか。まあいい……」
「なに? このお婆さん……ちゃんとわかってんの?」
ぐるり、と月島の小さな呟きに反応し、マコが首を回した。
「お婆さんじゃナイヨ」
「は?」
「お婆さんじゃナイヨ」