HQいろいろ@
□大晦日の過ごし方
2ページ/3ページ
日向の瞳孔が急速に縮まった。ぽかんと口が半開きになる。
「……なに、それ。それでお前なんて返すの?」
そこまで聞くのかよ後出しだぞ。と思ったが、退いたら負けなので答える。
「たぶん。っていう」
また沈黙が訪れた。
「お前が言えって言ったんだからな! 俺は答えたぞ。だから俺の大晦日の過ごし方に文句言う権利ねーからな!」
これ以上なにか言われる前にと、矢継ぎ早に自己弁護を繰り出す影山の声だけが夜道に響く。
「影山」
下から伸びてきた日向の手が、ぐっと影山の肩を抑えた。てっきりゲラゲラ笑う方向でくると踏んでいた影山は、勢いを削がれてしまった。
「わかった。お前が大晦日に無関心なのはよーくわかった」
「…………おう」
「でも取り合えず紅白見るのやめたら? つまんなくはないけどなんか静かっぽいじゃん」
「だから俺じゃなくて親が見てるんだっつーの」
「初詣は?」
日向の話題は突然転じる。
「初詣は行くだろ? 雑煮食う? 蕎麦は? 作る派? 食いに行く派?」
「ああああもううるせえいっぺんに聞くなわかんねーから!」
イライラが頂点に達し、日向を置いてずんずん早足で歩いた。随分差をつけたつもりだったが、「なあなあ」という声は真後ろからした。
この運動神経、恐れ入るっていうかムカつく。
「一緒に行かねえ?」
!?
ぎぎ、と振り向くと、日向がぽつねんと真下に立っていた。
「……なんだって?」
「初詣、一緒に。紅白終わるの待ってやるからさ、先輩とかみんな誘って行こうぜ」
ちょっと悪くないなあ。なんて思ってしまった瞬間我に返り、影山は腐ったような面を作って鼻を鳴らした。
「やだよ」
「えー! なんで!? お前の大好きな紅白終わるの待ってやるって言ってんだろ? あ、そうかその後のゆく年くる年も見んの? しょうがな」
「違うわ!! あといい加減俺がその老舗の歌番組楽しみにしてる設定をやめろ!」