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□大晦日の過ごし方
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 日向の瞳孔が急速に縮まった。ぽかんと口が半開きになる。


「……なに、それ。それでお前なんて返すの?」


 そこまで聞くのかよ後出しだぞ。と思ったが、退いたら負けなので答える。


「たぶん。っていう」


 また沈黙が訪れた。


「お前が言えって言ったんだからな! 俺は答えたぞ。だから俺の大晦日の過ごし方に文句言う権利ねーからな!」


 これ以上なにか言われる前にと、矢継ぎ早に自己弁護を繰り出す影山の声だけが夜道に響く。


「影山」


 下から伸びてきた日向の手が、ぐっと影山の肩を抑えた。てっきりゲラゲラ笑う方向でくると踏んでいた影山は、勢いを削がれてしまった。


「わかった。お前が大晦日に無関心なのはよーくわかった」


「…………おう」


「でも取り合えず紅白見るのやめたら? つまんなくはないけどなんか静かっぽいじゃん」


「だから俺じゃなくて親が見てるんだっつーの」


「初詣は?」

 日向の話題は突然転じる。


「初詣は行くだろ? 雑煮食う? 蕎麦は? 作る派? 食いに行く派?」


「ああああもううるせえいっぺんに聞くなわかんねーから!」


 イライラが頂点に達し、日向を置いてずんずん早足で歩いた。随分差をつけたつもりだったが、「なあなあ」という声は真後ろからした。
 この運動神経、恐れ入るっていうかムカつく。


「一緒に行かねえ?」


 !?


 ぎぎ、と振り向くと、日向がぽつねんと真下に立っていた。


「……なんだって?」


「初詣、一緒に。紅白終わるの待ってやるからさ、先輩とかみんな誘って行こうぜ」


 ちょっと悪くないなあ。なんて思ってしまった瞬間我に返り、影山は腐ったような面を作って鼻を鳴らした。



「やだよ」


「えー! なんで!? お前の大好きな紅白終わるの待ってやるって言ってんだろ? あ、そうかその後のゆく年くる年も見んの? しょうがな」


「違うわ!! あといい加減俺がその老舗の歌番組楽しみにしてる設定をやめろ!」
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