お題文

□起きる時間
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2人で生活するようになって、教授の生活にも少しずつ変化があった。その中の1つに起床時間の変化がある。
以前はまちまちできちんと決まっていなかったが、今は大抵7時には起きる。簡単に身支度をし、リビングに降りていくのが7時10分。朝食は大抵7時半頃なので、それまではお茶を飲みながら日刊予言者新聞を読むのが習慣になっている。
この静かな時間に、キッチンからの食事を用意する物音、ふわりと香るだしの匂い、時々混ざる調子外れな鼻歌――そう言ったものを感じるのを気に入っていた。

(まさかこの家で、こんなにも穏やかな朝の風景が見られようとはな)

昔の自分に話したところで、信じるはずもないだろうと思う。そんなものを想像すらしたことがないのだ。教授にとってこのキッチンは、平和や暖かさといったものとは全く結びつかないものだった。
それが今やこれが日常で、その日常を気に入っている自分がいるのだから、人生というものは全くわからないものらしい。



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