リレー小説
□それは言葉よりも熱いもの
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暫しの沈黙の後、額にキスをされたと理解したローが瞬時に顔を真っ赤に染め、口をぱくぱくとさせる。
その様子を見たコラソンはクスリと笑い、ローの額を指で突いてやった。
「それ以上リップムーブメント続けるんだったら、次は口にするぞ?」
「え、あ、うん…」
ローは赤く染まった顔を俯け、鼓動を落ち着かせるように両手を胸に押さえる。
コラソンはローの返答に頭を悩ませていた。
うんって、何なのだろう。
口にキスをしてもいいのだろうか?
それなら是非したいが、いや、その前に、何故ローは嫌がらないのだろう。
腕の中で恥じらいながら身を寄せるローは最上級に可愛らしい。
ローの胸の高まりが伝染ってきそうだと、コラソンは気づかれないように深呼吸をして自身を落ち着かせる。
嫌われてはいない。
むしろ、好かれているし、懐かれていると思う。
だが、ここで手を出してしまってもいいのか。
良心の呵責にコラソンが1人でジレンマと戦っていると、口を閉ざしてしまった相手にローがキョトンとした表情で見上げてくる。
身長差があるから仕方がないのだが、いつもとは違うようにとれてしまうローの上目遣いに、コラソンは有らぬ妄想を抱いてしまい、自分の頭を殴りつけた。
「ちょ…! コラさんっ!? 何やって」
「いや、ナニも…」
慌てたローがコラソンの腕を掴まえ、胸元に引き寄せる。
小さな手が大きな手を掴んでいる様子も、コラソンに取っては煽る材料でしかなかった。
しかし、このままでは話が進まないし、手を出してローに嫌われてしまうのは嫌だ。
コラソンは頭の半分以上を洗脳していたピンクな妄想を振り払い、咳払いをした後にローと目を合わせてやる。
「いいか、ロー、よく聞け。おれはお前に嫌われる以外は、何をされても嬉しい」
「うん」
「さっきはいきなりでビビったが、その、なんだ…、よろしくお願いします」
コラソンの見せた笑顔は相変わらずトラウマになるような笑顔だったけれど、ローは嬉しそうに笑い返した。
「うん、おれも、これからもずっとよろしく! で、コラさんの使ってるメイク道具はどこのメーカー? 色は似たようなの、おれが選んでもいいよな? 他にも選んでいいか?」
「え、え…? あ、ああ。任せる」
矢継ぎ早に飛んでくる質問に、コラソンはたじろぎながら答えると、ローは腕の中から抜け出してピョンっと床に着地した。
「ありがとう、コラさん。じゃあ、おれ、早速探す!」
「あ、お願いします…。って、早いな、おい!」
そういえば、思いついたら即行動派だったか、ローは。
コラソンはローが出ていった部屋の扉を見つめ、大きく息を吐き出した。
数日後、満面の笑みを浮かべたローに促されるままプレゼントの包装を解くと、贈られたコスメティックにコラソンはまたしても頭を悩ませた。
「ろ、ロー? これは…?」
「エスティローダーとか、マジョリカマジョルカとか、色々探したんだ」
「そ、そうか…。ありがと…」
わざとやっているのか?
誘っているのか?
プレゼントされたコスメティックを見つめながら、コラソンは目眩のようなものを覚える。
婚活リップに、エンゲージという名前のネイル。
それはどれもピンクピンクしていたが、それ以上に自分の妄想が加速をかけてピンクピンクしそうだと、コラソンは天を仰いだのだった。
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