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□叶えられた願い 〜前編〜
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「コラさ…ん…?」

俺は、本当は死んだの…か…?

麦わら屋達と革命軍の船に乗り、自分のクルーや、先に向かった麦わら屋のクルー達と合流する為、仲間が待つゾウへと向かい、そして到着した今…入り江まで迎え出てきたクルー達の中に、ある1人の姿に目を見開いた。

…でなきゃ、有り得ない。
有り得る筈がないんだ…
今、目の前の事を、頭が処理出来ない…

硬直して、動かなくなったローを予測していたのか、その人物は、迷う事なく目の前まで近付いてきた。

真正面で立ち止まったその顔を見上げたら…
自然と、涙が溢れて視界を歪める。

記憶されてる、あの道化のメイクこそないものの、鼻を擽るこの匂いは、記憶にあるのと同じ…
煙草の匂いと焦げた匂い…
あの人の匂い…
共に旅した時に、安らぎを与えてくれた、俺がいつまでも欲したあの匂い…
服も、黒いもふっとした、あの人が着てたコート、ハートを散りばめたシャツ、そして特徴的な帽子…

無意識に手が伸びて、目の前にある黒いコートを掴んだ。

「ど…うゆう…事なん…だ…?」

止めどなく流れ出る涙を、その人物は、大きな手をそっと頬に触れ、指で涙を拭いさりながら、優しく微笑み…

「ロー…長い間、ゴメンな…」

そう呟いたあと、俺の身体を引き寄せ、腕の中へ包みこんだ。
まだ、ついていけてない現実ではあったが、その人物に抱きしめられた今…
大好きだった…
恋しかった温もりと匂いが…
この瞬間、全てを支配した。

「…コラ…さ……くっ…」

すがりつき、泣きじゃくるローを、まるで小さな子供をあやすように、その人物…コラソンは抱きしめていた。

「ロー…ゴメンな…生きていた事を黙ってて…」

コラソンの言葉に、ローは身体を強張らせた。

そうだよ…
あの日、この人はドフラミンゴに撃たれて死んだ筈だ…
この人が俺にかけた能力も消えてしまったから、死んだとばかり…
だが、あの時の俺は、コラさんに言われた通り、逃げる事しか頭になく…
本当にコラさんが死んだのかは、確かめては…ない…

「どうして、生きられたんだ…? あの時、あんたは…既に瀕死だった上に、ヴェルゴによって更に追い詰められ、最後にドフラミンゴに撃たれたのに…」

疑問でいっぱいである俺の頭を撫でながら、コラソンは優しい目で見つめてくるだけだった。

「ロー、とりあえずは、中へ入ってその身体を休めよう…話は、それからででも遅くないだろ…? な…? 入ろう…ぜ…?」

そう言うと彼は、いきなり俺の両脇に腕を通し、俺を抱え上げ、そのままの体勢で建物へと歩き始めた。
俺は、また思考が止まったが、それも一瞬。
なんとか正気になり慌てて

「ちょっ…コラさんっ!!! 降ろしてっ! 自分で歩けるからっ」

自分のクルーや麦わら屋達の目の前でこんな風にされたら…
恥ずかしいだけじゃ済まない。
しばらく顔を見せたくない位に、今の俺は、いたたまれない思いでいっぱいだ。
だが、返ってきた返事で…
全てを諦め、彼の肩へ顔を埋めた。

「お前は、身体が辛い時程、上手に隠すからな〜。でも今は、大人しくオレに抱っこされとけ。まだ本調子じゃないんだろ…?」

バレていた…
相変わらず、この人は目敏い。
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