本当のマジを知ってるか?

□第2章 仲間
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雪哉side

『ここが、プリズンの入り口か…』

前田 「あぁ…」

ネズミ 「にしても、凄い量っスねぇ…」

おたべ 「さすがに、想像以上やで…」

今俺たちは、プリズン入り口の百メートル手前の茂みに隠れ、様子を伺っている。

『…山道を通れば、ここ以外にも入れる場所はあるだろ?』

前田 「うん、ちょっとした壁で包囲されてるだけだから」

『なら、βとα2、α4は、山道通って侵入しろ』

前田 「でもそれじゃあ…」

『俺たちは平気、威風堂々と正面切って行くさ』

おたべ 「そうすれば、かなりの混乱を誘えるはずや」

前田 「……その混乱に乗じて、私達は動く」

『よし…じゃあ、一旦みんなの所に戻ろ』

少し離れた所にいる皆の所に戻り、その旨を伝える。

優子 「じゃあ、雪哉の班と私の班は、正面から突っ込めばいいんだな?」

『はい。そうゆう方が、得意でしょ?』

優子 「あぁ!」

そう言ってニカっと笑う優子さん。

おたべ 「あと30分位で日の出や…日の出とともに動くで」

『そうだな…α2とα4、それとβは暗闇の中動き、侵入場所を探して待機してくれ』

センター 「分かった」

前田 「私達は、右から回っていく。そうすれば、最短で特別房までいけると思う」

『了解』

メッシ 「私達は左から…コンピューター室は、ほぼ中心だけど、大勢で動くよりはいいから」

おたべ 「せやな。センター達は少し時間空けて右から行き」

ネズミ 「了解っス」

『よし…そろそろはじめるか』

前田 「そうだな…じゃあ、行くよ」

『あぁ』

前田と学ランと歌舞伎シスターズの四人は、暗闇に紛れるように山の中に消えていった。

メッシ 「じゃあ、そろそろ私達も」

『気を付けろよ』

ブラック 「心配するな。私がついてる」

『ブラックさん…お願いします』

ブラック 「あぁ」

メッシとヤギ、ウルセーヨとテツヲ、アンニン、ブラックさん、チームホルモンの11人が前田達とは逆の方向に向かって歩き出す。

土地勘と戦力のあるアンニンが先頭を歩き、ブラックさんがしんがりを務める。

そのまま見送るつもりだったけど、俺はヲタを呼び止めた。

『ヲタ!』

ヲタの元に走って行くと、ヲタは振り返った。

ヲタ 「どうした?」

『これ』

俺は右手の小指に付けていた指輪をヲタに渡した。

ヲタ 「え?」

『不安になったらさ、それ見て俺たちの事思い出せよ』

ヲタ 「…雪哉」

『皆ついてるから』

ヲタ 「……ありがとな」

『おう。あ、それめちゃくちゃ大事な指輪だから、ちゃんと返せよ?』

ヲタ 「分かったよ!」

『無くしたら、しばく』

ヲタ 「おま…大丈夫、無くさねぇって」

『じゃあな』

ヲタ 「おう!」

指輪を受け取ったヲタは、走って暗闇の中に消えていった。

おたべ 「あんたら、付き合っとるん?」

『あ?なんで?』

おたべ 「指輪渡すなんて」

『ちげーって。あの指輪はな、お守りなんだよ。あの指輪付けてから、負けた事ねぇんだ』

おたべ 「そうなん?」

『あぁ。あれは、俺の恩人に貰った指輪なんだ』

おたべ 「そんな大事なもん、預けて良かったん?」

『おう、問題無し。ちゃんと返してくれるしな』

おたべ 「そっか」

俺とおたべは、ヲタの消えていった方を眺めながら話していた。

おたべ 「だんだん、明るなってきたな」

『あと20分もしたら…完全に日が昇るな』

おたべ 「そろそろ、準備しよか」

『あぁ』

俺たちは、皆の元に戻る。

センター 「そろそろ行く」

『おう、気を付けてな』

センター 「あぁ」

『シブヤさん、皆の事、頼みますね』

シブヤ 「…うん」

『頼りにしてますよ』

シブヤ 「うっさい」

そう言うと、シブヤさんは先頭切って森の中に入っていった。

それを追うようにミユが走り、シブヤと言葉を交わして先頭を歩き出す。

そこにネズミが続き、センターが最後尾を歩いていった。

ゲキカラ 「みんな、行っちゃったね」

『あぁ…でも、皆なら大丈夫だよ』

ゲキカラ 「そっか…そうだね!」

優子 「そろそろ、行くか?」

『そうですね…』

その時、おたべの持っているトランシーバーが受信した。

各班一つずつ渡してあるトランシーバー。

少しノイズがあるが、しっかりと前田の声が聞こえる。

(前田 「こちらα2、そろそろ予定してた侵入場所につくよ」)

おたべ 「壁のぼれそう?」

(前田 「あぁ、ちょっと高いけど、大丈夫そう」)

『じゃあ、俺たちが乗り込んでから少ししたら侵入しろ』

( 前田「うん…気を付けてね」)

おたべ 「ほな、私らもそろそろ行くわ」

そう言ってトランシーバーを切る。

『あ、ちょっとトランシーバー貸して』

おたべからトランシーバーを受け取り、全トランシーバーと通信する。

『α1の雪哉だけど、皆聴こえる?』

( ネズミ「こちらα4、聴こえるっス」)

( アンニン「こちらβ、聴こえるよ」)

( 前田「α2も、聴こえてるよ」)

『今はちょっとだけ離れた場所にいるけど。俺たちの目的は同じだし、帰るところも同じだから。だから、なんの心配もない。周り見れば、仲間がいるから。何も怖い事なんてない。皆一緒に、帰ろう』

(ネズミ 「……了解っス」)

(アンニン 「分かった…ありがと」)

(前田 「カッコつけすぎ…でも、その通り。みんなで帰ろう」)

『そろそろ、俺たち行くからさ。日が昇ったら、それが合図だ』

そう言ってトランシーバーの通信を切る。

おたべ 「ほんま、カッコつけすぎやで」

『うっせ』

おたべ 「まったく…でも、確実に士気は上がったで」

『なら良かった』

サド 「雪哉には、優子さんと似た部分があるな」

『そうですか?』

サド 「あぁ」

『嬉しいです』

優子 「あー、うずうずしてきた!」

『そろそろ、ですね』

そう言って後ろを振り返ると、日が昇りきり綺麗な朝日になっていた。

ゲキカラ 「うー、眩しい」

おたべ 「ほな…作戦開始や」

『よし、行くぞ』

俺たちは横一列に並び、プリズンに続く1本の道を歩き出した。

宣言通り威風堂々と、正面からの殴り込み。

こんなのいつ振りだろうと、全員が少しだけワクワクしていた。

看守 「おい…なんか人が来るぞ」

看守 「本当だ…一体なんだ?」

看守 「おい、あいつ脱獄したダースじゃないか?」

看守 「本当だ!バンカーもいるぞ!」

看守 「看守長に連絡だ!!」

俺たちが入り口から20メートル程の所で止まると、慌ただしく看守達が動いていた。

看守 「お前たち、何しに来た!」

おたべ 「何しに来た言われてもなぁ?」

優子 「こっちにはここにいた奴らが2人も居るんだぜ?する事は決まってるだろ」

看守 「なに!?」

『捕まってる仲間の救出と……むかつくからお前達ぶん殴りに来た』

看守 「な、なんだど!?」

『よし…行くぞ!』

それを合図に、俺たちは走り出した。
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