本当のマジを知ってるか?

□第2章 仲間
4ページ/19ページ



ブラックside

先程、サイレンとアナウンスが聴こえた。

だが、私達はすぐには動かなかった。

正直、仲間を囮に使うみたいで凄く苦しかったが。

ここで下手に動いて私達が見付かっては元も子もない。

暫くプリズン内の様子を見ていたが、入り口方向に向かう看守達と、逆方向に向かっていく看守がいた。

入り口方向には優子さん達がいる。

逆方向は…シブヤ達か?

どっちにしろ、今この辺りは手薄だ。

侵入するなら…今か。

ブラック 「皆、今この辺りの警備は手薄だ。今のうちに行こう」

ヲタ 「はい」

アンニン 「コンピューター室は、私達が入れられていた所と渡り廊下でつながっている別館にある。私が途中まで先に行くから、合図したら一人ずつ来て」

ブラック 「分かった。私が最後に行く。何かあったらすぐに呼べ」

アンニン 「うん」

アンニンはそう返事をすると、軽々と壁を越えて走って行った。

別館と呼ばれる、少し小さい方の建物に近付き、少し凹んだスペースに入って、合図を送ってくる。

メッシ 「じゃあ、次は私が」

そう言ってメッシもアンニンの元へ行く。

ヤギ 「次は私」

ヤギも、アンニンの元へと素早く行く。

その後も、ウルセーヨ、テツヲ、ウナギ、バンジー、アキチャ、ムクチと誰に見つかる事もなくアンニンの元へと行った。

ヲタ 「じゃあ、オレ行きます」

ブラック 「あぁ。気を付けろ」

ヲタは壁を登り、左右に看守が居ない事を確認してから壁を降りて走り出す。

しかし、あと半分程のところで1人の看守が走ってやって来たのだ。

それに気付いたヲタは、無理をせず途中の茂みに身を隠す。

ヲタ 「はぁ…はぁ…はぁ…」

こっちから見ても、ヲタが両手で口を覆い、息を殺しているのが分かる。

看守 「んー?なんか見えたんだけどな…」

そう言って辺りをウロウロする1人の看守。

このままだと、アンニン達もばれる可能性がある…。

私は壁を登り、静かに降りる。

看守は、こっちに気付いていない。

ブラック 「可能性な限り…速く…」

私は一呼吸つき、自身最速のスピードで看守に近付き、首筋に手刀を叩き込む。

気を失った看守を茂みに隠し、ヲタの元へと駆け寄る。

ブラック 「大丈夫か?」

ヲタ 「は、はい…すみません…」

ブラック 「なに、謝る事じゃない。あんな急に現れたら、誰だってそうなる」

ヲタ 「あ、ありがとうございます」

ブラック 「それより、緑のジャージが役にたったな」

ヲタ 「へへ、そうですね」

そこまで言うと、やっとヲタが笑った。

ブラック 「よし、皆のところに行こう」

ヲタ 「はい」

それから、私とヲタはアンニン達の所へ行った。

ウナギ 「ヲタ、危なかったな」

ヲタ 「あぁ…でも、大丈夫」

そう言ってウナギとハイタッチを交わすヲタ。

あれ、こいつ指輪とかするんだな。

なんか、ヲタには似合わない少しゴツめの指輪を中指にしてる。

男物なんじゃないのか?

ヲタ 「ブラックさん?」

ブラック 「ん?あぁ、すまない。聞いてなかった」

ヲタ 「いえ。これから別館に入ってコンピューター室に行くみたいなんで、また最後尾、お願いします」

ブラック 「あぁ、分かった」

駄目だな、集中しないと。

そして私達は、再びアンニンを先頭に別館の中に入り、コンピューター室を目指す。

中に入ると、人の気配が殆ど…いや、全くと言っていいほどにしない。

どういう事だ…いくらなんでも、全員出払ってるなんて事は無いだろう…。

少し不穏に思った私は、アンニンに伝えておく事にした。

ブラック 「アンニン、ちょっといいか」

アンニン 「うん、どうしたの?」

ブラック 「…人の気配が全くしないんだ…いくら雪哉や優子さん、センター達が引き付けてくれているとは言え、さすがに全員居なくなるなんて事は、おかしい」

アンニン 「…確かに。ちょっと警戒した方がいいかも」

ブラック 「少し、気を張りがら進もう」

アンニン 「うん」

そう伝えて、私は最後尾戻った。

ヲタ 「ブラックさん…やっぱりおかしいですよね」

ブラック 「ヲタもそう思うか?」

ヲタ 「ここまでくれば、さすがにオレでも分かります。こんなにも手薄にする理由が分からない…」

ブラック 「とりあえず、考えても答えは出ない。先に進もう」

ヲタ 「はい」

それから、地下のコンピューター室に着くまでも、誰一人看守を見ることは無かった。

コンピューター室で、メッシがホストコンピューターを操作し、銃の無効化をしている時も、ずっと考えていた。

順調過ぎる…。

どうしても不安が拭えない私は、アンニンからトランシーバーを受け取り、雪哉に連絡を、取った。

ブラック 「こちらβのブラックだ。雪哉、聴こえるか?」

そう問いかけると、十数秒してから、雪哉からの返答があった。

(『こちらα1の雪哉。ブラックさん、何かあったんですか?』)

ブラック 「今大丈夫か?」

(『えぇ、おたべとゲキカラとダースが、動いてくれてます』)

ブラック 「そうか。今私達はコンピューター室に着いたんだが、様子が変なんだ」

(『随分はやいですね。様子が変って、どういう事です?』)

ブラック 「ここに来るまでの間、外で偶然出くわした1人しか、看守に会っていないんだ。もちろん、雪哉や優子さんやセンターが引き付けてくれているんだろうとも思ったが、別館の中にも看守が1人もいないなんて…変だと思わないか?」

(『確かに…おかしいですね…俺たちの予想では、当初予定した以上の看守が居るはずなんです…実際、今俺たちが居る本館の方にはうじゃうじゃいるのに…』)

ブラック 「もしかしたら…」

私がそこまで言った所で、上の階で見張りをしていたヤギ、ウルセーヨ、テツヲのうち、ウルセーヨだけが血相変えて戻ってきた。

ウルセーヨ 「奴ら、網張ってやがった!!今ヤギとテツヲが頑張ってるけど、圧倒的に数が違う!!来れる奴は一緒に来てくれ!!」

それだけ言うと、ウルセーヨは急いで戻っていった。

ブラック 「聴こえたか?プリズン側も、侵入者が来たら、コンピューター室に来るだろうって事は予測してたみたいだな…」

(『ブラックさん』)

ブラック 「大丈夫だ。こっちにはアンニンも居る。それに、チームホルモンもな」

そう言って、ヲタ達の方を見る。

すると、いつもはヘタレな筈のヲタの顔が、そんなものは微塵も感じさせない、精悍な顔つきになっていた。

ヲタ 「ちょっとだけ、貸してください」

そう言ってきたヲタに、トランシーバーを渡す。

ヲタ 「雪哉、オレ達、行ってくるよ」

(『……あぁ。ヲタ達なら絶対に大丈夫だ。皆を守ってくれ』)

ヲタ 「あぁ!行ってくる!」

そう言ってヲタは、私にトランシーバーを返す。

ヲタ 「オレたちは…チームホルモンだ!!行くぞ!」

ヲタのその一言で、チームホルモンの五人は階段を駆け上がっていった。

ブラック 「…あいつら、あんなに頼もしかったっけな」

(『そうですよ。あいつらは頼もしいです』)

ブラック 「ふふ…そうだな。私も、行ってくるよ」

(『ブラックさん…お願いします』)

ブラック 「あぁ」

そう言って、トランシーバーの通信を切る。

アンニン 「メッシ…この部屋には絶対に来させないから。メッシは安心して、メッシにしか出来ない事をやって」

メッシ 「はい。私もここで、戦います」

ブラック 「じゃあ、行こう」

そうして、私とアンニンは、メッシをコンピューター室に残して、階段を駆け上がった。

そこには、100は下らない看守がいた。

でも、不思議と不安は、欠片も感じなかった。

ブラック 「熱き血潮の柔肌よ…お前達に…明日はもう無い」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ