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□UNREQUITED LOVE2
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衝動的になったのは、普段、あれだけ意味のある視線を送ってきながら何もしてこない山本が、その日に限って、探りを入れてきたからだと思う。
アイツがオレのことを好きなんだってことぐらい、もう遥か昔から気付いていた。ただ、確信と自信はまた別のもので。
ひたすら声をかけてきた中学生時代に、オレも素直になれば良かったのに。何かが怖くて、踏み出すこともできずただ待つことしかできなかった。やがて互いに苦しくなって、女と付き合ったりもした。寝た。
でも、所詮は代わりを探していただけで、そんな恋愛が続くわけ無かった。


にょおん、鳴き声がして顔を上げる。と、そこに今日は休みだったはずの男が瓜を抱えて立っていた。

「おつかれ」
「…なにしてんだよ」
「もう終わるかなと思って。瓜も早く獄寺に会いたいって言うからさ」

柔らかく笑んだ山本にどきりとして、慌てて目を逸らす。
この10年、なんて無駄なことをしてきたんだろう、心の底から思った。

「どうした?」
「なんでもない。そこ座って待ってろ」
「ん。瓜、遊んで待ってような」
「おい。騒ぐ気か?」
「んなことしねーって。瓜と獄寺のこと見てるだけ」

いやらしく笑いながら、山本はソファーに座って瓜を膝に乗せた。前足を掴んで上下に揺すると、瓜は鳴きながら尻尾をゆらゆらと揺らした。

とりかかっていた書類もひとしきり終わったし、帰るか。トントンと束を揃えてクリップで止める。一応10代目に挨拶して、あ、ついでにコーヒーでも持っていこう。そう思って立ち上がりかけて、いつのまにか真後ろにいた山本に抱きしめられた。

「……っ」
「獄寺。いま、誰のこと考えてる?」
「こんなことされて他の奴のこと考えられっかよ…」
「な、キスしていい?」

耳の後ろにふうふう息を吐きながら言われて戸惑う。やばい、これだけでも相当…。

「獄寺?」

わざとらしく低い声で名前を呼んだ山本が、そのまま耳朶に噛み付いてくる。振りほどこうとしても強く抱かれていてはどうしようもない。
キスがしたくないわけじゃない。ただ、オレたち、大人だろ。もう少し場所を弁えるとかねえのか?
震える声で訴えるも、くすくす笑われて、「だって獄寺、いますぐしてほしいって顔してる…」と囁いた。

「そ、んなわけ…」
「ねぇんだ?」

間髪入れずに聞き返されて、言葉を失う。こんな風に翻弄されてどうする。10年も言い出してこなかった、山本なんか、に。

「こっち向いて」

とりあえずといった口調で身体をぐるりと回される。顔を見て驚いた。あれだけ余裕たっぷりにオレ煽っていたくせに、山本は、ひどく切羽詰まったような顔を、していて。
ああ、コイツ本当にオレのことが好きなんだと思うと、なぜか笑えてきてしまった。

「笑うなよ。……オレ、いまでも夢なんじゃないかって不安なのな」
「…オレだって」

いまこうして迫ってきているけど。昨日の夜、あのあと。せっかくオレん家に泊めてやったのに何もしてこなかったのはおまえだろ。
そう言った途端、いきなり顔を上げられて口を塞がれる。





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