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□コロされるかもしれない。けどそれもうれしい。
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「っ…ぅえ」

や、そうなるんじゃないかとは思ったけど。
オレは気怠い腕を持ち上げて、放心状態の獄寺の髪を梳いた。
一応、飲んでくれた、みたいなんですが。
なんか、感想…聞くの怖い。

とりあえずいそいそと衣服を直して獄寺を見る。やっぱりぼんやりしてて、まさか、意識が無い、とか。いくらなんでもそれはないよな?

「あ、の。獄寺?」
「……」

うわあ。
完全無言の獄寺に、なんだかものすごく申し訳ない気分になる。
さっきまでは気持ち良すぎて死にそう、だったけど。今度はいたたまれなさすぎて死にそう、だ。
この状態じゃ、まさか続きを仕掛けるわけにもいかないし。

とにかく水でも用意しようと立ち上がりかけて、くん、と裾を引かれる。恐る恐る窺うと、獄寺はようやく「……行くな」と口を開いた。

「でも…」

オレ、獄寺の嫌がることしたいわけじゃない。引き止めてくれたことは、素直に嬉しい、けど。
してくれるなら、して欲しいなと思っただけで。だから最初に、『してくれますか?』って聞いた。で、頷いて…くれて。

獄寺は、オレを見上げながらジーンズの裾を掴んでるのとは反対の手で、ゆっくりと口元を拭う。
ちろりと濡れた赤い舌が見えて、オレは咄嗟に目をそむけた。

「なんか…わりぃ」

けほ、と咳ばらいして、獄寺が言う。目が合って、泣きそうになってるのに気付いて慌ててしゃがんで抱きしめた。

「うん、オレもごめんな…」
「…や、おまえが謝ることねぇだろ」
「だって獄寺」
「つか、謝んな。……なさけねーだろ」

居心地悪そうに身じろぎした獄寺は、そう言ってもう一度「わりぃ」と呟いた。
オレはてっきり、もうしたくないって意味の、わりぃ、だと思ったから。もうあんなもんって意味の、涙だと思ったから。だから、

「好き、なのは…嘘じゃねーんだ」

続いた言葉に、今度はオレが危うく泣きそうになった。
じゃあ獄寺がいま、思ってるのは。

「疑って…ないよ?」
「っおまえが。『好きだから美味しい』とか言うから…!」
「そ、れは」

獄寺のだから、飲める、っていう意味で。というか、そんなこと、気にしてるんだ?気持ち悪いとか、怒ってるんじゃなくて。情けないって、思ってくれてる、んだ。

「ごくでらあ」
「…んだよ」
「なんでそんなかわいいの?」
「はあ?」
「オレ、いいよ。してもらわなくてもいい。獄寺がいてくれたらいい」
「それじゃあオレの立場がねーだろ、」

ぐすんと鼻を鳴らした獄寺の頭を撫でて、細い身体を抱き上げる。涙目で睨まれてもかわいいだけで何にも迫力なんかなくて、へへって笑ったら不審そうな顔された。

「山本」
「ん?」
「…怒ってねぇの?」
「ごめん獄寺、オレいま、しあわせすぎて死にそうだから」
「……ふーん」

なんだそれはそれでむかつく、と舌を打たれても全然気にならない。

このまま風呂入ってご飯食おうぜーって言ったら、「風呂も飯も後でいい」と却下された。
そっか。そうだよな。あんなの飲んだばっかだし、……食欲も湧かないとか?獄寺を見たら、

「勘違いすんなよ。ただ、続き、するなら。それは後でいい、と思った、だけで」
「っ獄寺!」
「うわっ、おま、落ちる!」
「していいの?!」
「いちいち聞くな!」

耳元で「このバカ!」と怒鳴られたけど、やっぱり気にならない。こんなことで、落ち込むわけなくて。リビングに向かってた足をまた寝室に戻したら、獄寺は大人しく オレに抱えられたまま、「山本がバカで良かった」ともらした。
これはもしかして、聞いちゃいけない言葉だったのかな、と思って素知らぬ顔してたら、獄寺が小さく笑って。

あ、いまのほうがしあわせすぎて死にそう、と思った。けど、獄寺といたらいつもだから、これじゃ命がいくつあっても足りないなとも思った。

「おい。………またがんばっから」

……獄寺は、オレのこと、殺す気なのかもしれない。



fin.

こんな雰囲気の曲が書きたいです。(どんな宣言ですか)あの、変な単語は使いませんので。笑
経緯もなにもかもすっ飛ばしてそのうえ致したあとの会話ですみません…!

【2008.3.9】


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