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□3話番外編
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「…マジでどうするかな」
藜は呟いた。
傘を忘れたのは自分のミスだ。
濡れて帰るか、それとも、と考えて隣に立つ青年を見る。
整った顔立ちだが、どこか冷たい印象のクラスメイト、柏木 翡翠。
藜の視線に気付いた翡翠は振り向いた。
「…どうした?」
「いや…」
「貸すぞ」
差し出された折り畳み傘を見る。
素直に借りて帰りたい衝動もあるのだが、そうすると目の前の青年が濡れて帰ることになってしまう。
「いや…忘れたのは俺の落ち度だし、それ貸したらおまえ、傘ないだろ」
「私は濡れてもかまわないが」
「いや、ダメだろ。俺の罪悪感考えようぜ」
翡翠は考え込むように傘を見つめる。
「ならば…ともに使うか?」
「…え」
藜は言葉を失った。