賢者の石

□1:薬学教授とご対面
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ユリの視界に飛び込んできたのは全身を黒で固めた男ーーーーセブルス・スネイプその人だった。

『…あ!!!!』

スネイプは突然誰かに突進されて驚いているようだ。

その眉間の間に深い皺を刻み、怪訝そうな顔でユリのことを見下していた。

『スネイプ教授!!!!』


ユリが爛々目を輝かせて立ち上がると、スネイプは杖を抜いてユリと間をとった。

『え、』

「貴様何者だ?見たこたがない、生徒ではないな?何をする気だ?何故我輩を知っている?」

『生徒ではありません。が、今年からホグワーツに通います。昨「おかしいですな、我輩の記憶が正しければホグワーツは夏休み中にそれも入学前の子供の受け入れなんてしていないはずだ。然るに貴様は無断でここに侵入したということになる。」

『いや、え、ダンブルドアから何も言わ「ほう、成る程?ダンブルドアの名を出せば我輩が怯むと思っているのだな。」

スネイプの剣幕はとどまるところを知らないようで、その勢いのある淡々とした声にユリの言葉は次々と阻まれていく。

その剣幕の凄さたるや、いくらスネイプ大好きなユリでも冷や汗タラタラの状態である。
真っ直ぐにユリへ向けられている杖の先からは今にも緑の閃光が飛んできそうだ。

『いやいや、そんなことこれっぽっちも思ってないです!!これから校長室へ行くところなんですよ!』

「そんな言い訳が通じるのは馬鹿かトロールのみだ。本当のことを言え。」

壁際に追い詰められスネイプに杖を向けられるユリは、なぜ事前に説明しておいてくれなかったのだとダンブルドアを呪った。

(でも、よく考えれば寝坊した私が悪いのかも…)


そんなことを考えてる間にも2人の間は詰められていき、遂にユリは冷たい壁にぴったりと背中をつけるほどになってしまった。

スネイプに壁ドンされるという願ってもなかったシュチュエーションに萌えてる場合ではない。

この状況を背にしてこの状態のスネイプはとても危険だとユリは察知した。

今年は特に生き残った男の子、リリーの瞳を持つハリー・ポッターが入学してくるのだ。スネイプが怪しい者を排除しておきたいと思うのもわかる。

それにしても、だ。

(無実を主張する女の子に杖向けて尋問って酷くない!??)

流石英国紳士の風上にもおけない陰険教授だ。この時の相手が例え見事なプロポーションの女でも同じ態度をとったのだろう。

そんなことを考えていたら自分が身動き一つとれないことに気づいた。

いつかけられたのか、全身金縛り呪文だ。

瞬きさえもすることを許されなくなったユリを見下し、スネイプは勝ち誇ったような顔をした。

「さて、さて、さて、我輩はこれからお前をお望み通りダンブルドアに差し出そうと思うのだが、如何かね?」

スネイプは嫌味として、ユリを焦らせようとして言ったのだがユリにはそれが神の声とも言える言葉だった。

(是非そうしてくださいお願いします!!!!!!)

ユリは表情の一つも変えられない状態なため、いくら全力で肯定してもスネイプには全く伝わっていない。

その為か、スネイプはユリが嫌がっていると思い込んで「当然の報いだ」と冷たく言い放ち、背後に現れた人物にも気づかずにユリを魔法で移動させようと杖をあげた。



「セブルス、ユリをーーーその子を解放してやってはくれまいか」

浮遊呪文をかけようと思っていたスネイプは突然背中越しに名前を呼ばれて驚いた。

勿論、名前を呼ばれて驚いたのもあるがそれだけじゃない。その声の主がダンブルドアであり、ダンブルドアが少女のことを‘‘ユリ’’と言ったからだ。


つまりダンブルドアと少女は知り合いで、少女の言っていたことは嘘ではないということだ。

半月眼鏡の奥から軽く睨まれたスネイプは無言でユリにかけていた呪いを解き、それからダンブルドアに向き直った。

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