賢者の石

□プロローグ
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ホグワーツに潜入して早々迷子になった。

ホグワーツのだいたいの見取り図は頭に入っているし、映画でもたまに出てきたから少しはわかる。


ダンブルドアの部屋とか必要の部屋は多分いけるし、大広間だって見つけた。だが行きたい場所に行けない。……地下牢ってどうやって行くのだろうか…。


折角ホグワーツに来れたんだからスネイプに会いたい。あの不気味と称される部屋の主、巨大な蝙蝠のような薬学教授にどうしても会いたい。


最期までただ一人の女性を愛し抜き、命を賭けてその意思を継いだ男のことを思うとやるせなさと共にがぜんやる気が湧いて来た。

『今会いに行きます待っててください教授!!!いざゆかん!セブルス・スネイプの研究室へ!!』


「ふぉっふぉっふぉっ、元気でいいのう、じゃが今君に用があるのはセブルスじゃのうてわしでの」


全力ダッシュを始めようとした少女は思わぬ声に驚いて、非常口の表示ような間抜けな大勢で静止した。



「わしはここ、ホグワーツ魔法魔術学校校長のアルバス・パーシバル・ウルフリック・ブライアン・ダンブルドアじゃ、長い名じゃろ?」


半月眼鏡の奥から覗くブルーの瞳を光らせて老人は‘‘英語で’’名乗った。


『え、あ、、、あ‼︎私はユリ•クロセです!英語は少ししか話せないです!』


ユリが英語で返すと、ダンブルドアはユリにおいでおいでをして歩き始めた。


(……カムって、おいでってことよね)




合言葉でガーゴイル像が飛び退き、現れたエレベーター式の螺旋階段にのる。


するすると上へ向かう途中、ユリはふと気になったことを聞いた。

「あの先生、今は何年なんですか?」


『1991年7月1日じゃよ』

「…そうですか、ありがとうございます。」

ダンブルドアの言葉に、少し好奇心が芽生えた。夢なのだからそんなに長くはいられまいとは分かっているが、9月1日になればハリーが入学してくる。ハリーの、第二の人生の始まりだ。


それまで見れたらいいな、と思っていると、いつのまにか最上階についていた。


ダンブルドアがドアをあけてユリを部屋に招き入れる。

ユリはぺこりと会釈してそろりと校長室に入った。



「さて、わしは実は語学もほんの少しばかり堪能での」


部屋に着くなり、ユリをソファーに案内したダンブルドアは流暢な日本語で話し始めた。

「まず、明確にしておいた方がいいことがありそうじゃ。」


ダンブルドアが人差し指を立てながら半月眼鏡の奥から百合の目を覗いた。

ユリはダンブルドアに何を言われるのかとビクつきつつ、なんで夢なのに緊張しなきゃいけないんだろうかと少し不満に思っていた。

「一つ目は君が何者か、ということじゃ。ユリ、君はどこからきた?」

ダンブルドアはそれこそ冗談を言う時みたいに軽い口調で言った。

『…別の世界から来て、気づいたらハグリッドの小屋の側にある地下の部屋にいました。…ホグワーツにこれるなんて夢のようです!』


まぁ夢なんですけどね、とユリが笑うとダンブルドアも微笑み、話を続けた。


「なるほど、そして君はその部屋では寝ていたのじゃな?」


『え、ええ、そうです。…なんで知っているんですか?』


ダンブルドアは目でユリの質問を却下し、話しを再開した。


「今は言えぬ、ただ言えることはユリ、ここは夢の世界ではなく現実じゃよ。紛れもなく、君の産まれた世界じゃ。君はこの世界で産まれた。」

ダンブルドアは二回言葉を繰り返しながらユリの目を見つめた。


ユリは言われたことの意味を理解するのに時間がかかった。


ーー私はハリーポッターの世界で産まれた?

ーーこれは夢じゃない?

ーーもう、家族にも会えない?


『そ、そうですか…』


しっかりと頭の中で整理した状態でも、口をついで出た返事は稚拙で間抜けな言葉だった。


「話せば長くなるからのう。それはまたにして……ハグリッドを知っておると言っておうたな…別の世界から来たと言っておうた君が何故ハグリッドを知っている?」

『あ、』


先程の自分の失言に気づき、ユリの頭は完全に真っ白になった。本気でこの夢から覚めたいとさえ思った。

『ええと、あの、実はーーー…』




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