愛されピエロ
□知らぬが仏。
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「……ふふふっ♪」
「あら、おはようウェンディ」
「あ、ミラさんっ!おはようございますっ!」
カウンターの前でぺこりとお辞儀をして、いそいそと席に座る。その顔は未だ、にまにまとして嬉しそうだ。
それを見て、ミラが尋ねる。
「やけに嬉しそうね。何かあった?」
「はいっ!」
ウェンディが嬉々として答える。
ウェンディが嬉しそうな理由、それは――
「実は、さっきビックスローさんに会ったんです!」
「あぁ、やっぱり」
そんな事だろうと思った、とミラは微笑む。
すると、ウェンディがむぅ、と唇を尖らせた。
「そんな事って何ですかー……」
「ごめんね、悪い意味じゃないのよ。ただ、ウェンディがあまりにもわかりやすいから……」
「だって、朝一番でビックスローさんに会えたんですよ!?私にとっては今日一日分のラッキーを使い果たしちゃったくらいの事なんですっ!」
幸せそうなウェンディ。
その姿に、ミラは幼い頃の妹を重ねていた。
(そういえばリサーナも、昔はナツの話するだけでこんな風になってたかしらねぇ……)
今はそれほどでもないようだけど、と苦笑する。今のナツとリサーナは、どちらかと言うと姉弟だ。
ミラがそんな事を考えている間にも、ウェンディは遠目にビックスローを見つけてにこにこしている。