短 編 集
□やっぱり君が好き
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「え…、ホール担当……ですか?」
それは英国ホテルの調理師になって2年目の話だった。俺はコック長に呼ばれ突如移動を言い聞かされた。
辞令を言い渡されるようなヘマはこれと言ってはしていない。そりゃ人間関係で色々擦れたりしたがそれは何処にでもある些細な事。厳しくても持ち前の頑張りでなんとかこなしてきた筈なのに…。
「ど、どうしてですか?」
「それは支配人に聞いてくれ。俺も今日聞いた話だ」
「……」
支配人と聞いて俺は眉を顰める。思い当たる節が見つかったような気がした。俺は俯き膝に乗せていた両手をぎゅっと握り締める。
「三井は顔が良いんだしホールの方が向いてるかもね」
「…!?」
コック長の励ましなのか皮肉なのかわからぬ何気ない一言に、何かの重圧に押し潰されそうなショックを味わったのを今でも覚えている。
(なに…それ……俺は料理人としては不要って事?)
俺は何も言い返す事もできず、コック長が部屋を出て行くまでの間じっと床を見つめ、コック長が出て行った後、俺は玉の様な涙を一粒零した。
そして、俺はホールに行ったが馴染める訳もなく退社し、寮住まいだった為に家を出た。
安いホテルに泊まりながら次の仕事を探す。そして見つけたのが住み込みOKのBAR俺はここだと運命的なものを感じ即座に電話を掛けていた。