戦うリーマン
□-序章-
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「はぁー良かった。俺の部屋は無事みたいだ。大家さん被害が無かった方住めるよね?」
底辺まで落ち込んでる俺の後ろで、大家に明るく声を掛ける聞き慣れた声。
「部屋は大丈夫だけど電気回線やらガス、水道の点検がこれからで今日は無理よ?」
「あーそうなの?災難だなぁー」
まるで困ってない様子の聞き慣れた声の主に俺は振り返り睨み付けた。
「課長!この災害にもっと深刻な一言ぐらい部下にくれてもいいんじゃないですか?!」
オールバックでノンフレームの眼鏡を掛けたいかにも出来る男の品がある俺のたまたま偶然同じマンションに住む課長、長谷部。
俺が睨み付けたにも関わらず平然と俺を見下ろす。
「やあ、結城くん会社ぶり。お互い災難だねぇ。災難続きで思わず怯えた子猫を拾ったよ」
課長の胸に抱くタオルケットからか細い猫の声…タオルケットから顔をひょっこり出すとそれは…
「おかゆ!」
俺は思わず涙を流して課長ごと猫を抱き締めた。