あんたのオモチャ

□束の間の休息
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「どうしたの?夜まで帰らないんじゃ…」

「その筈だったのだけど、同じくヘルプで入った同僚がバックアップ持っていて早く終わった」

 康介はちらっと藤堂に目をやる。俺が女性と食事しているのが不思議なのか、藤堂が好みに近い女性だったのかは分からないが気にしている様子だ。藤堂もまた「イケメン!」と小声できゃきゃ騒ぎつつも先程話した俺が告白できない好きな相手と察知し区切るように康介を観察している。

「藤堂…この人は俺が居候させてくれている。本田康介。…康介、藤堂は俺の専門学校時代の同期なんだ」

「どうも、藤堂里美でーす。康介さん格好良いですねモテるでしょー?」

「ははっ、そんな事ないよ?里美ちゃんこそ可愛いね。お兄さんと今度デートしない?」

 俺の隣に座り店員を呼んでコーヒーを頼む康介、やはり女性の扱いに慣れている。呆れ顔で康介を見ればにこっと微笑み掛けられ不覚にもどきっと胸がときめいてしまった。

「もしかして二人って昔、付き合っていたとか?」

「ち、ちが…」

「あ、惜しいなー私の片想いなんですよー」

 それを聞き俺と康介は声を揃えて「え?」と、藤堂を凝視した。

(片想い?そんな話聞いたことがない)

「彼の趣味に似合わないんで即座に玉砕しましたけどね」

「へぇ…可哀想に俺が慰めてあげようか?」

「ありがとうございますー。私、上京して半年で友達少ないんで友達になってくれますか?」

「いいよ、いいよ。メルアド交換しよう」

 二人のテンポについて行けずメアドを交換し合うのをぼんやり眺めながら残りの食事を摂ろうとしたら、康介が楽しみに置いていたパンを取って齧ってしまった。
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