あんたのオモチャ

□束の間の休息
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「…いや、違うよ。そいつノンケだし」

「ふーん。好きなんだ?」

 女性の勘なのだろうか鋭い質問が返ってくる。いやもう薄々感じているのだろう。俺は口篭もりながら首を縦に動かした。

「…でも、あいつはノンケだから諦める」

「ノンケだからって諦めるの早いね。専学の時は勇気出して告ってたじゃない」

 確かに昔は告白する勇気があった。運良く付き合う事になったが汚れの知らない友達の延長線…。だが、後で追々知った事なのだが、そいつは女性の友達が多い俺をコネで女性と付き合えるかも知れないと言う根端で俺の告白に応じたらしい。そう言えば手を握るのもキスをするのも拒まれていた。俺の苦い思いでのひとつ。

「昔の様な世間知らずじゃないんでね…」

「そんな怖気ついていたらいつまで経っても幸せになんないよ?」

 藤堂の言葉が胸を突く。俺にも幸せになれる権利があるのだろうか?悲しみに沈みそうになっていると空気を変える様に店員が食事を運んできた。藤堂も「さ、食べて元気出しなさい」とにこやかに声を掛けてくれる。約1日ぶりの食事。まず水で口を潤しパンを齧る。口内に小麦の味が広がり、頬が緩む。それを見て藤堂も微笑みストレートの紅茶を口にする。
 つもる話は置いて食事を楽しみランチの調理法や味付け、ケーキの盛り付け方とかを料理人としての話を弾ませる。
 ふと、話が途切れた所で視線を街路に運ぶと歩く一人の男性が目に入る。

「康介!?」

「ん?あ…」

 俺に声を掛けられ間の抜けた声をあげこちらを見る康介。テラスに入り俺たちのいるテーブル席へとやってきた。
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