あんたのオモチャ
□そして…
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「!?」
腕を引っ張られたかと思うと背中から抱きしめられた。
「お願いだからここに居てくれ」
縋る康介に胸が熱くなるが、俺は鞄を下ろし腕から離れようともがく。
「な、何言っているんだよ。俺が居たら藤堂を呼べないのだろう?」
「アレは彼女じゃない」
抵抗するように腕の力を強める康介に俺は力負けしてしまう。
抱き締められ顔が近くなった事でキツイ酒の匂いがし、こちらまで酔いそうになる。
「ホテルから出て来ておいて彼女じゃないって藤堂に失礼だろ!?」
「相談にのってもらって…弾みでホテル行ったけどヤってない…勃たなかったんだ」
康介の息が耳に掛かる熱の篭った声に俺の胸は再び苦しさを感じる。
「……」
俺が抵抗を止めると康介は俺に頬擦りしふらつく足に俺に寄り掛かる。この数年バーテンダーを勤めていたがこんな質の悪い酔っ払いは初めてだ。
「一週間、ずっとお前の事を考えていた…俺、お前の事が好きだ」
康介の言葉に耳を疑う。そして何度も脳裏で繰り返してみた。そんな事があるわけないと。
「……知るか…そんな事」
瞳が潤み珠の様な涙となって康介の腕にと零れ落ちる。それに気づいた康介は俺の肩を掴み俺の体を自分の方へと向けさせる。
「なんで泣いているの…?」
「男を好きになっていい事なんてないから止めとけ」
俺は基本的な事を告げる。最初から同性が好きな者は仕方ないとして、ノンケな奴が同性を好きになるなんて社会の秩序を放棄すると一緒だと。
今まで通り異性を好きになり結婚して、子供を授かるのが幸せなのだと語ってみせる。