あんたのオモチャ
□そして…
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「仕事…行ってないの?」
「……」
「ごはん。食べてる?」
「……さっさと用を済ませろよ」
冷たくあしらう康介に涙しそうになったが俺は頷き寝室へと向かった。
部屋に入るとリビングと違い俺が最後に出た時の様に布団がたたまれ、衣服がハンガーに掛かり並べられていた。
康介は仕事も行かず、食事を満足に摂らず、酒を浴びるように飲み、ソファーで就寝していたようだと推測できた。
この1週間で康介に一体何があったのだろう。藤堂を一人ホテルに置いてきぼりにしてしまった事で彼女と揉めたのだろうか?藤堂を放って俺を追いかけたのだ、なにも無かったわけでは済まされないのだろうが。
俺が謝る事なのだろうかと悩みつつクローゼットからスポーツバックと衣服を出し、詰めていく。洗面所に行き歯ブラシを取り。脱衣所や物干し場に着替えが無いか確かめ玄関で靴をビニール袋に入れバックに入れる。
拾われた時の様ないで立ちでリビングに戻りソファーに腰掛け缶ビールを飲む康介に目をやる。
「これ、鍵…と心添え。…ありがとう」
「……」
テーブルに鍵と心ばかりのお金が入った封筒を置くが康介はこちらを見ることなく外を眺めている。
「…酒、ほどほどにしないと体壊すよ」
胸がキリキリ痛む中、勇気を振り絞って気遣いの声を掛ける。だが、康介はこちらを見ようとはしない。
「……」
相変わらず無言の康介にお辞儀をすると、俺はリビングを後にした。玄関まであと数歩…その時。
「行くな」