あんたのオモチャ
□届かぬ想い
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「あ、勿論。コーの家がいいなら通いでも良いのだよ?」
「…は?」
突然、康介の名が出てきて目を丸くしお湯を零してしまった。神崎は慌ててヤカンを持ち布巾で湯を拭いてくれた。
「コーの家に居るのだろう?」
「なんで…知って…」
驚きと恐怖でパクパクと口を開いては神崎を見るが、彼は動じることなくコーヒーを淹れている。
「あの後、コーからメールがあった」
「……」
なんてメールしたのだろう。愛玩人形を見つけたなんて酷い言われようではないと思うが、わざわざ神崎にメールするなんて康介らしくない。俺は無言のまま淹れられたコーヒーの湯気を見つめる。
「コーに告白したの?」
「!!?」
次から次と神崎は幾つの爆弾を持っているのだろう。流石に声を失い俯き足元を見る。
「見ていたら分かるよ。好きなのだろう?」
まさか、今の状況まで知ってはいないだろうかと心臓が激しく鼓動する。コーヒーを差し出されると顔を上げるが体が硬直して受け取れない。
「…告白なんて出来ないです」
「まぁ、コーはノンケだからなぁ」
「……」
落ち着いてコーヒーを飲む神崎はぼんやりと店内を見渡してから俺を見つめ、そして柔く笑みを向ける。大人の余裕なのだろうか、それとも神崎の性格なのだろうか、こちらまで落ち着く。