あんたのオモチャ

□届かぬ想い
3ページ/9ページ

「あ、勿論。コーの家がいいなら通いでも良いのだよ?」

「…は?」

 突然、康介の名が出てきて目を丸くしお湯を零してしまった。神崎は慌ててヤカンを持ち布巾で湯を拭いてくれた。

「コーの家に居るのだろう?」

「なんで…知って…」

 驚きと恐怖でパクパクと口を開いては神崎を見るが、彼は動じることなくコーヒーを淹れている。

「あの後、コーからメールがあった」

「……」

 なんてメールしたのだろう。愛玩人形を見つけたなんて酷い言われようではないと思うが、わざわざ神崎にメールするなんて康介らしくない。俺は無言のまま淹れられたコーヒーの湯気を見つめる。

「コーに告白したの?」

「!!?」

 次から次と神崎は幾つの爆弾を持っているのだろう。流石に声を失い俯き足元を見る。

「見ていたら分かるよ。好きなのだろう?」

 まさか、今の状況まで知ってはいないだろうかと心臓が激しく鼓動する。コーヒーを差し出されると顔を上げるが体が硬直して受け取れない。

「…告白なんて出来ないです」

「まぁ、コーはノンケだからなぁ」

「……」

 落ち着いてコーヒーを飲む神崎はぼんやりと店内を見渡してから俺を見つめ、そして柔く笑みを向ける。大人の余裕なのだろうか、それとも神崎の性格なのだろうか、こちらまで落ち着く。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ