あんたのオモチャ
□弄ばれる唇
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「…と、そろそろ時間だ。店は閉めたけど暫く片付けしているからおいでよ」
「はい、近い内に行かせて頂きます」
康介に軽くボディタッチしてから駅の方へと向かう神崎を見送ると、康介は不意に俺の腕を強引に引っ張り人気の無い路地へと連れ込んだ。
「なんでここに?風邪は?」
心配する言葉とは裏腹に少し厳しい表情。体を休めずこんな所まで来ているのに怒ったのだろうか?
「康介が携帯忘れたから届けに…。喉の調子はもう大丈夫だよ」
俺はポケットから康介の携帯を取り出し、無造作に差し出すと康介は「すまない」と呟き携帯を受け取るが何か腑に落ちない顔をしている。
そして突然、俺を抱き寄せ口づけを仕掛けてきた。荒々しく交わされる口づけ。康介の舌が俺の軽く唇を開いた所へと捻り込んでくる。俺は歯を食いしばり口内に入るのを拒むと歯列に舌を這わす康介。脳内が麻痺し力が抜けるのを感じていく。堪らず口を開き舌伸ばそうとした時、それを阻止するように康介の携帯が鳴り出した。
唇を開放しチッっと舌打ちしては電話に出る康介。助かった様な残念の様な複雑な気持ちで、俺は濡れた唇を袖で拭い視線を落とす。
「会社に戻らなきゃ…一人で帰れるか?」
「子供扱いするなよ」
「…気をつけてな」
何か言いたげの様子だったが、俺の額に軽くキスをしてから会社の方へと去っていった。