短 編 集

□オオカミ少年
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「ノート見せて」

「嫌だ」

 放課後、クラスの連中は部活に行ったり、帰宅したりと教室には俺と英二しか居ない。グラウンドからは運動部の掛け声、上の教室からは吹奏楽の楽器の音が聞こえてくる。

「えっちゃん愛してるぅ」

「俺は嫌い」

 俺は5時限目に居眠りをして補修としており、英二は日直で居残りのとばっちりを受けている。だが、俺は知っていた、英二は日直だからではなく、俺が居るから残っていてくれているのだと…。

「見せてくれないと終わんねー」

「…丸写しするなよ?」

 な?嫌いとか言いつつ放課後付き合ってノートを見せてくれる。素直じゃない所が可愛い。
 英二は鞄からノートを取り出し補修箇所のページを開き俺に渡した。俺の乱雑な字とは違い綺麗で見やすい英二のノート。俺はシャーペンをくるりと回してから自分のノートに回答を写しだした。

「狼少年の話知ってる?」

 ノートをとっている俺に英二は突如話しかける。英二から話しかけるのは珍しく驚き顔を上げ内容もおかしかった為に首を傾げて英二を見つめた。

「ん?狼が出たぞーって嘘言うやつ?」

「そう、いつも嘘をつく少年は本当に狼が現れても助けてもらえず狼に襲われてしまう」

「自業自得だな。…で、それが何?」

 俺が馬鹿なのか、英二の言う意味がよくわからない。眉を顰め英二に訪ねてみた。

「お前は少年だな」

「は?なんで?」

「いつも俺の事…好きだとか愛してるとか言って、本当に好きになった時その人に信用されないって事」

 視線を落とし少し声のトーンを下げ真意を呟く英二。それを聞き捨てならないと俺は両手を机に叩きつけ立ち上がり英二の方へと身を乗り出した。

「待てよ、俺は嘘ついてないぞ」

「どうだか」

 緩い俺だが自分の気持ちを偽りだと言われ腹立たしく感じ、これでも分からんでかと英二の肩を抱き、ガツンと歯がぶつかるぐらいの勢いで唇を奪う。

「んっ、…ふぁ……っ」

「…俺が狼少年なら、えっちゃんを美味しく頂くよ」

 英二の柔らかい唇を名残惜しく感じながらも離しては、いつものストレートな告白とは違い少し捻りを効かせてみる。

「はぁ?………ぁ、……馬鹿」

 頭の回転が早い英二は俺の言わんとしている事が分かったらしく。頬を紅潮させては俺の胸に顔を埋めた。

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