ゆるりゆらゆら。

□ゆるりゆらゆら。
1ページ/3ページ

「いいけど、俺ゆると話したいー。じゃないとセンセーが未成年とイケナイ事してる事チクっちゃうよ?」

 パーカーに手を突っ込み悪戯っぽく笑う松居。おっさんは眉を顰め松居を睨む。

「俺…一緒に話聞きたい」

「なんの話するー?あ、俺はせとせんの初めての男ねヨロシクー」

「松居!」

 なんとなく二人の雰囲気が異様だったのでもしやと思ったが松居の告白に目の前が真っ暗になりバランスを崩しかける。足に力を入れ立っているのがやっとで口を開け何かを発しようとすると涙が出るのではないかと思うぐらいのダメージだった。

「いーじゃん。何の経験も男の勲章って言ってたうだろ?せとせんね、最愛の奥さんが浮気しちゃって人間不信になっちゃったんだよね。で、慰めてあげたのが俺って感じ。でも、恋愛感情ないから気にしないでね?」

「…ゆる…ってのは?」

「ん?せとせんがさ「責任を取らせてくれ」って交際を求められたんだよね。だけど俺、そういう重いの苦手だから断ったの。「俺みたいに軽い男じゃなく、ほわっとした癒し系の受け止めてくれる人を探せ」って。ゆるりとゆらゆらした可愛い子がお似合いだって」

 裏表のなさそうな松居だ多分言っているのは本当だろう。ハッテン場でおっさんと初めて会った時言った「ゆるりゆらゆら」は何かの呪文の様に感じたが探していたのに違いないと思えば頬は火照り恥ずかしさから俯きおっさんの服の裾を掴む。おっさんは覚悟を決めたか松居の口を止める事なく俺の腰に腕を回しそっと支えてくれていた。

「松居は…何故、学校辞めて姿を消したんだ?やっぱり俺が…」

「ちょっと待って。退学したのは自分に合ってないと思ったから。消えたつもりもない。そんなの引きずってたん?つか、ゆるに失礼じゃね?」

「……」

 俺らが交際していると勘違いしているみたいだが否定しないおっさん。いつの間にか指を絡める様に手を繋いでくる。好意はあるのだろうがそれ以上の事を求められないから自惚れる事もできない。
 携帯らしい着信音が鳴り松居がポケットから携帯を出すと通話をはじめた。簡単な会話をした後通話を切りにこっと俺に向かって微笑む。

「何かあったら連絡ちょーだいよ。大丈夫、寝とったり横恋慕するような事しないから」

 そう言うと松居は俺たちの前から姿を消した。残された俺たちは無言で目を合わせ手をぎゅっと握り合うとお互いの温もりを感じた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ