あんたのオモチャ
□束の間の休息
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俺の腕を引っ張り繁華街へと向かう。ここなら全ての店を食べ尽くしたと言っても過言ではない何処が安いく美味しいのか、値段に合わない味なのか大体分かる。俺は1軒のカフェレストランを指差す。オープンテラスが売りのカントリー風な店。店の感じも味も良いのに低価格なので気に入っている。
「あ、ここ入って見たかったんだー。オープンテラスって一人だと勇気いるから」
店に入り見晴らしが良いテラスに案内されると藤堂は上機嫌に腰掛け辺りを見渡す。俺はメニューを藤堂に渡しおしぼりで手を拭く。
「上京して友達いないの?」
「働いている人とは仲いいけど、OFFに遊ぶまで仲良くないかな…休みが合わないのもあるしね。私、ケーキセットの紅茶でいいや」
店員がオーダーを聞きにやってくると、ランチセットとケーキセットを注文する。店員がメニューを下げ去ると、藤堂は水を一口飲み高ぶるテンションを少し落ち着かせる。
「俺も働いていた頃は時間に余裕なくて遊ばなかったな…」
「ん?今は働いてないの?」
「ここの近くのバーで働いていたのだけど先週店じまいして無職になっちゃった。住み込みだったから家もなくして…友達の所に転がってる」
苦笑しながら事の事情を話すと「大変だったねー」と整えられた眉を下げ同情を受ける。嫌味や貶す子ではないから昔から色んな事をオープンに話できた。今思えば親友に近いのかも知れない。
「友達って彼氏?」
藤堂もまた俺がゲイだと知っている。いや、同期の仲間は皆知っていた専門学校は8割がた女性で俺がゲイだと知ると俺を男として見ず同性として仲良くしてくれたりもしていた。中には腐女子って子もいて俺の事を根掘り葉掘り聞いてくる子もいたが気兼ねない対応が差別を受けず嬉しく思ったものだった。