あんたのオモチャ
□そして…
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「今日、康介の家に行ってきます」
「俺も行こうか?」
箸を止め俺を見る神崎。俺がケジメをつけるのだと肌で分かった様で心配そうに見つめる。
「いえ、荷物を取りに行って鍵を返すだけなので…」
「そうか…何かあったら連絡するのだよ?」
穏やかに微笑む神崎に勇気を貰い、昼食を終えると俺は康介の家へと向かった。
マンションが近づくにつれ一歩一歩が重くなる。玄関まで行くと深呼吸をしてからインターフォンを押す。物音が聞こえドア開くと少しやつれた感じの康介が出迎えた。
無精ひげにヨレヨレのYシャツ。どう見ても会社に行っていない様な風貌。俺の顔を見ても無表情で何処から見ても少しおかしい様子に見える。
「……」
何も言わず暫く向かい合い立っていたが立つのも怠いのか壁に寄りかかる康介。満足に食事を摂ってないのだろうかかなり心配だ。
「大丈夫?」
「……んぁ」
重々しく口を開き頷く康介。そして、やっとの事で「何しに来た」と呟く。
「荷物…取りに来た」
俺の言葉を聞くと康介は重い体を動かす様にのそっと無言でリビングの方へと歩き出した。俺も靴を脱ぎリビングへと向かえば酒臭さに鼻を摘み辺りを見渡す。するとビールや日本酒などがテーブルなど所狭しと転がっており、ソファーには乱雑に服が脱ぎ散らかされて凄い荒れ模様だった。