あんたのオモチャ
□春の雨
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俺を拾ったのはあんたの気まぐれだったに違いない
春の雨はまだ冷たく折角の桜が散るのをぼんやり眺めながらスーパーの袋を持ちトボトボと歩く。
住処まであともう少しなのに遠く感じる。マンションのホールを濡れた靴で濡らしエレベーターで3階を上がると二本の傘を持ったあんたが立っていた。
「康介。出かけるのか?」
「お前が傘を持たずに買い物に行ったから迎えに行こうとしたところだ」
馬鹿と呟き俺の腕を掴み家へと引っ張り入れられ、玄関に置かれていたタオルを頭に掛けられると、しとしとに濡れていた髪を手荒に拭かれる。
「い…痛いって」
「ちゃんと乾かさないと風邪引くだろう」
拭き終えるとタオルを首に引っ掛けられ温かい唇が重ねられた。条件反射で目を閉じ康介の腰に腕を回す。すると角度をつけ深く口づけられ腰を撫でられた。
「ん…こんな所で…」
唇離し頬を紅潮させては康介から視線を逸らす。すると康介は耳元にふっと息を掛け心地よい声のトーンで囁く。
「体が冷えている。一緒に風呂に入ろう」
体の芯がザワつき、血液が逆流しそうで立っているのがやっとだった。流されたら駄目だと自分に言い聞かせる。
「…康介が入る必要ないだろ」
手の甲で唇を拭いながら康介を睨むが康介は動じず、にやりと笑っては俺の脚に膝を割り込ませ股間を刺激させてきた。そう、俺の股間はキスだけで主張を始めていたのだ。
「これを慰めてやるよ」