ホストクラブダンガン愛ランド

□その2
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広さ1畳程度の薄暗い空間、最近はLEDやら省エネ電球が主流となっているというのに、この部屋の明かりは古いはだか電球のみ。その頼りない光が、作業に没頭する二人の男を何とも心細く照らしている。
ドア以外の壁部分には所狭しと段ボールや重厚な木箱が重なりあうように敷き詰められていた。
左右田はドアから見て右奥に積まれた段ボールを順次開け、中に納められたワインの消費期限と在庫数を確認し、手元の用紙に数を記入する。
この店一番の消費飲料であるワインは、殆ど売れ残り等無いものの、万が一、入荷日が新しいものを古いものより先に出すなんて事があれば十神あたりに何を言われるか分からない。

とは言いつつ、よくもまぁこんなめんどくさい作業を、日々まじめにできるよなぁ、と後ろで同じように作業をしている日向に尊敬の念を示す。
やっている事は同じでも、その手際が自分とは比べ物にならないくらい迅速である。
ぱねぇな…と小声で呟きながら、渋々と目線をボトルへと戻し、慣れない作業に悪戦苦闘していた。

「この前さぁー…」
「んー…?」
ふいに日向が左右田へ話しかける。声のトーンからして、雑談だろう、後ろの気配のみではあるが、日向も作業を続けながら話しているようであった。そう思った左右田は生返事を返し作業を続けた。

「トイレ掃除してたんだけど」
「んー…」

左右田は段ボールからワインを取り出し、ラベルの内容を確認しようとクルクルとボトルを回す。輸入ものなので記載は外国語表記。なのでそもそも見辛いし、字も細かいし、とにかく解りづらい、あとどれくらいこの作業があるのかを考えると、始めて直ぐではあるが、少し嫌気がさしてしまう。

「掃除中に狛枝がきてさ」

左右田の作業の手が止まる。

「マジかよ……尻大丈夫か?」左右田は恐る恐る日向の方へ顔を向けた。
「何でだよ」
淡々とウイスキーの在庫確認をしながら左右田の方に振り向きもせず、訳がわからんという口調で日向が答える。
この様子だと、無理矢理乱暴されたとか言った類いの話ではないらしい。
やはり作業をしながらの取り留めもない雑談のようだ。とりあえず話を聞こうと、左右田はワインのラベルに目を戻し、作業を再開した。




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