バッテリー

□君の気持ち
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その日は朝からメールが来た。

『部活終わったら、そっちに行くから、駅で俺を待ってろ』

何で駅で待ち合わせなんかにするんじゃろか、あいつは……。レッチェでええのに……。俺は敢えてそうは聞かずに、分かったと返信した。つか部活終わる時間が大体同じとは言っても、俺、キャプテンじゃからやる事それなりにあるんだが……。遅れそうな予感しか、しないな。
部活も終わり、俺は監督と明日の練習メニューに付いて話し合っていた。その時だ、鞄の奥底にしまってある携帯が鳴り響いた。マナーモードにしてるとは言え、鳴り響きバイブ音。監督はそれに呆れたのか、ため息をついていた。
「海音寺、電源ぐらい切っておけ」
「すみません……」
「……電話だろう?出ろ」
「あっ良いんですか?」
「煩い」
「はい……」
俺は携帯を捜し出し、通話ボタンを押して出た。誰から掛かって来てるか、見もしないで。
「もしもし」
『もしもし、じゃねぇよ。海音寺君、俺をどんだけ待たせるつもり?』
げっ……。瑞垣からじゃった。あっ時間……!待ち合わせ時間とか、決めておらんかったけど。けど、きっとかなりの遅刻になってると思う。俺は慌てだしてしまった。
「わっ悪い!10分ぐらいで終わるかと思ってて……」
『俺、もう30分も待ってんだけど?早く来いよ』
「えっえっと……」
ちらっと監督の方を見た。すると監督は口パクで、早く行けと言ってくれた。あの監督が珍しい……。だが今はそんな事を考えてる暇はない。俺は携帯を片手に一礼をして、鞄を持ち、慌てて部室から出た。
「全く海音寺は……。女を待たせるなんて、男として駄目だな」


「すまん、今そっちに向かう」
『はようしてくれ。寒くて、凍死してしまいそうじゃ』
真冬に俺は、何待たせてるんだよ。今日は駄目な日だ……。そう思いながら俺は、走っていた。


駅にやっと着いて。瑞垣はペットボトルを持ってそこに居た。
「すまん!」
「……全く、ふざけんなや」
俺は息を上げながら深く頭を下げていた。と、その時、俺は首に鞄の紐を掛けられた。
「うわっ」
「俺を待たせた罰や。持ってけ。それと、今から俺をファミレスに連れて行く事。勿論お前の奢りで」
「……お、おう」
まぁ、待たせた俺が悪いんじゃよな。当然か。俺は瑞垣の鞄を持ち、いつもと同じじゃあれかと思い、たまには違うファミレスへと向かった。



店内に入るととても温かくて。温度差が激しいせいか、汗を掻きそうだなと思った。
「やぁーっと温かい場所に居られるわ」
「ほんますまん……」
「んで?遅れた理由は?」
「……監督と、明日の部活の練習メニューついて話してて……」
俺はつい、下を向いてしまった。すると瑞垣は、ほう、と言って来た。
「あのキビシー監督、お前を帰らせたんか?」
「あっああ。なんでか知らんが、抜けさせてくれてな」
「……ふーん、珍しい事もあるんじゃな」
水を一気に飲み干す俺。走ったせいで、喉が酷く渇いていた。渇いた喉に染み渡るこの感じ。俺は一息付くと、瑞垣を見つめた。瑞垣はメニューを見ていた。
「……おい、あんま、頼むなよ?今日あんまし持って来てないんじゃから」
「えー」
「文句言うな」
「人を待たせておいて?」
「っ……。けっけど、ほんまに5000円しか、持って来てないからな。ほら」
俺は財布の中身を見せた。すると瑞垣はあー、とため息を付いていた。
「えー……マジかー」
「しっ仕方ないじゃろ」
「全く……」
瑞垣は、食べたいもんが決まったのか、ボタンを押して店員さんを呼んだ。そして渋々頼んでるかのように見えた。沢山頼む気やったんやろな……。俺も適当に、頼んでいた。

「つかよ瑞垣、どうして俺を呼びだしたんじゃ?」
「………あー、何でじゃったっけ」
「は?」
「いやな、お前さんを待ってる間に、その理由を、忘れてしもうた」
「なんやそれ」
「仕方ないやろ。お前が、遅刻するから」
やたら遅刻、と言う単語を強調して言って来るこいつに、俺は少しイラッとしたが、事実、遅れたのは俺だ。……うん、あれやな。こいつとの約束は絶対に遅れないようにしないとな。俺は改めてそう思った。
「……まぁ、大した用じゃなかったと思うで」
「……そうやろな」
はぁーと俺はため息をついた。ほんと、こいつの事は分からん。けど……惹かれる部分もある。 何かこう、頼り甲斐があると言うかほっとけないと言うか。とにかくそんな感じじゃな。まぁ、急に予定を作られる事には反対じゃけど……。俺はコーラを飲んだ。その時だった。携帯が鳴った。
「………げっ、監督からじゃ」
「出んのか?」
「………出なきゃ、まずいよな」
「そりゃあ………」
「はい………」
俺は渋々その電話に出た。

と思っていたら、その予感は的中してしまった。
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