バッテリー

□寒いからお前と一緒に居るのに
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寒い中、部活をする俺達新田東。
それは当たり前で。
18.44m先を見つめて。俺はひたすら投げる。そこに投げるべき相手が居るから。
「………」
人に命令されるのは嫌いだ。俺は俺自身の意志で投げる。
そうだろ、豪。


「よし、今日はここまでじゃ!」
海音寺キャプテンの声の元。今日の部活は終了した。
俺は足早に片付けて。着替えようと更衣室に向かっていた。そこに、奴が来た。
「たくみくーん」
吉貞だ。いつものように、俺に後ろから抱き着いて来る。それが、日課になっていた。
「今日もスマイルが無かったじゃけんよ?ほら、今からでもええから笑えって」
「………豪を笑わせて見ろよ。そうしたら、笑顔でお前に接してやるよ」
にやりと笑う俺。自分でも少し怖いと思った。
「!………やっぱ、止めとくわ」
そう言って俺から離れる吉貞。その後、豪が俺の腕を掴んで来た。
「豪?」
「早く着替えんぞー」
「あ、待てよー」
置いて行かれるのか、そう思った吉貞が慌てて俺達の後にくっついて来た。


早々に着替えて。
俺は校門の所で豪を待っていた。俺がふと空を仰いだ時だった。
「原田」
海音寺さんの声が、後ろから聞こえた。
「明日も今日と同じ時間から練習じゃ。お前は無いと思うが、遅刻は」
「分かってますよ」
「そうじゃな」
またな、と言って。海音寺さんは一人で先に帰って行った。
その次位に豪が来た。
「巧」
「ん」
「帰ろうぜ」
「……」
頷く。

豪と並んで一緒に帰る。豪は携帯を出していた。多分母親にメールでもしてるんだろ。って、俺もしとかないと。今日、ここまで遅くなるなんて言ってないし。また下手に心配かけられると面倒だし。
「あれ、お前、携帯変えたんか?いつからスマホに?」
「つい最近。………この前、俺、吉貞と一緒に川に落ちただろ?その時に一緒に携帯も」
「あ、あー………」
納得したのか。苦笑いを浮かべていた。
「それにしても、冷えるな」
寒い、と豪が言った。俺も寒いとは思ってはいるが、それを口に出してどうにかなるのか。そう考えてしまう。
俺は黙って豪に寄り添って歩いてみた。いつもとは違う俺を、出して見たかった。
「………」
ちらっと豪の反応を見て見る。顔を真っ赤にして歩いている。
まだまだ子供だな。
ふっと俺は笑った。
「やっぱり」
「?」
「お前の事じゃ。俺が豪の腕を掴みながら歩いたらどんな反応をするかな〜って。思ったじゃろ?」
「………ばーか」
「え」
「俺はただ寒いから………」
誰がお前の反応を楽しむんだよ。俺か?俺はそこまでSじゃない。
「嫌なら離れる」
「いいい嫌じゃ無いです!」
初めからそうしてれば良いんだよ、豪。俺は更に豪の腕を強く抱き締めた。
「っ………」
「今更照れんなよ」
「てっ照れてねえから!」
本当か?お前って直ぐ顔に出るタイプのくせして。良くそんな口が利けるよな。

そんな豪が可愛く思えた、12月の前半での出来事。

こう思うと、クリスマスが楽しみだな。一緒に過ごすんだろ?まあ、その日も部活だろうけど。盛大にやろうぜ、豪。
俺とお前の、二人きりでな。







END

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