QUARTET★NIGHT(小説)

□深層心理1
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休日は外へ出て絵を描くのが私の日課だ。




風景画を描いたり。

空想の物を思い描いてみたり。

今の心境を絵に移してみたり。


私にとってこのスケッチブックは自身を映し出す鏡。


私は地面に座って膝を立てるとそこにスケッチブックをのせた。

そして鉛筆を手に持ち、目の前に広がる景色へ目をやった。


緑色の草木。

その草木を揺らす風。

雲のある青い空。

涼しげな音を立てながら流れている小川。



ん……?

どこからか歌声が聞こえる。


…………あの人かな。

ずいぶんと綺麗な人だ。


あの人も描こうと思い観察を始めた。



水色の髪に整った顔。

まるでお人形みたい。

彼の髪を風が優しくすくう。

彼は手元にある紙の束を見つめ、木に背中を預けて何かを口ずさんでいるようだ。



鉛筆での下書きを終えて、緑色の色鉛筆に持ち替える。



……あれ?

さっきの人がいない。

帰っちゃったのかな?

まだあの人の色を、心の色を見ていないのに。
残念だ。




「ねぇ、それってボク?」

「わっ!」


真横からの透き通った声に驚き、横に倒れ込んでしまった。

視界の端で風がスケッチブックのページをめくっている。

あっ、さっきの綺麗な人だ。








これが私たちの出会い。






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