サマーウォーズ


□第十章
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三月




理一は幹部候補生として毎日頑張っているようだ。

どんな姿で練習に励んでいるのか興味があるが、理一はあまり教えてくれない。

秘密主義だからだ。



悲しいことに、翔太くんは私に反抗するようになった。


ショックだが、これが成長した証なので、怒るわけにいかない。


侘助はこの頃忙しくしていた。

よく、自分で作ってみたいとぼやいてたが、今は舞い込んでくる仕事で余裕がない。


理一は私に写真を送ってくれた。

回りは理一と同じような体格をした男共がこちらを真剣な目で睨み付けている写真。


もう一枚はピースサインをした、ラフな格好をした男たちだった。


そこには、楽しそうな理一の姿も写っている。


私は何時ものように写真を手紙と一緒に送った。


相変わらず、理一はまめに手紙を送ってくれる。


おばあちゃんのところに弁護士さんが来るようになった。


そして、父とも連絡をとるようになった。


この時、私は自分の状況を理解できていなかったので、ただ父が憎くてしょうがなかった。


この年も、当たり前のように父が帰ってくることはなかったが。









四月



私は中学二年生に進級した。

変わったことはな一つもない。

いや、男子に告白された。

二人にだ。

二人とも断ったが、ちょっと嬉しかった。



調度その日に帰省していた理香姉にこの事を理一と侘助に言った方が良いか相談すると…。


「あいつらにいったら嫉妬してなにしでかすかわかんないからやめときなさい。
それに、一々言わなくたって良いの。
秘密がある方が女性らしいのよ。」


と言われたので、私は秘密を作ることにした。


しかしながら、すぐに侘助にばれてしまい、なぜばれたのか聞いてみると、陣内家の門の前でうろうろしている男の子がいたので、かつあg…じゃなくて、問い詰めたそうだ。



私が頻繁に陣内家に通っていることを知っている男子は、ここが私の家だと思い込んでしまったそうだ。


「おい、坊主。ゆかは俺に会いに来てるんだ、邪魔するな。」


と、男子に言っていたことが、二日後学校で女の子たちに教えて貰った。


『近藤ゆかは年上の男がいる。』


と噂になっていたのだ。

私は否定しまくった。


でも、心の中ではそんなにいやじゃない自分がいた。








五月


克彦兄が結婚した。

克彦兄が結婚したということで、理一が帰ってきた。


由美さんという少し太めの、眼鏡をかけたやさしそうな人だった。

祝言はいつも通り陣内家で行われた。

これから由美さんは克彦さんと一緒に暮らしながら生活していくそうだ。


みんなで克彦のお嫁さん由美さんと、一緒にご飯を食べていると、お酒のまわった克彦兄が、兄の邦彦兄と頼彦兄に向かって「悪いな!先に!」と言い出した。


「は!俺は大丈夫だ。」

「ま、まて頼にぃ!もしかして!」

「あ?いるぞ。彼女。」

「はぁ!!」


それから万作さんの長男の頼彦兄の話になった。

真剣におつきあいしているそうだ。


「ばあちゃん。父さん。俺、何年後かにプロポーズして、連れてくるから。」


堂々とした宣言をした。


私は侘助に話しかけた。


「侘助、克彦兄も結婚しちゃったし、頼彦兄も結婚するとしたら、次男の邦彦兄はどうなると思う?」


「一生独身だ。」


「おいおい、それは言い過ぎだと思もうけどな。」


理一が侘助の言葉を遮ろうと少し大きめの声を出したが、邦彦兄に聞かれてしまっていた。


「くそっ!絶対嫁さん見つけてやる!」


邦彦兄はそう宣言したが。

皆から野次を飛ばされどんどん小さくなっていった。


「じゃあ!ゆかちゃん!俺が結婚できなかったら嫁さんに来て!」


酒が回った邦彦兄はそんなことを言った。


「ええ?んー良い「駄目!絶対!」…。」


理一が身を乗り出して、邦彦に抗議を始めた。


「はあ?いいだろう!てか理一、お前はゆかの彼氏じゃないだろ?」


「…ゆか。」


真剣な目で隣に座っていた理一が私の肩をぎゅっとつかんだ。


お酒を大量に飲んでいるはずなのに、酔っているようには思えない。


「結婚しようか。」


「は?」



理香姉のチョップと、珍しく侘助がそこにあった新聞で理一の頭を叩いた。

親戚一同は「また理一は…。」とか言って笑っている。


侘助だけは冷静に理一と邦彦のことを見ていた。


「ゆかちゃんはー、もう中学二年生よ。彼氏くらいいんでしょ?」


直美姉が酔っぱらいながら絡みだした。


「え?いないよね。」

理一が驚いたようにこちらを見る。


「あ、わた「4月に同級生の但馬、近藤。以上男子二人に告白された。」…って、侘助っ!」


侘助はにやっと笑いながら言った。

もう!

からかってるんだから!


「そうなの?」

直美姉が驚いたようにこちらを見た。

「全部断ったよ。」


「よかったな、邦彦。未来のお嫁さんが他の男にとられなくて。」


今日の主役の克彦兄がはやし立てる。


「だめ、ゆかは克彦にはあげない。」


「ええーいいだろ?理一にいより俺のほうが歳近いじゃん。」


「一つしか違わない。」

そう言って涼しい顔で日本酒を口に含む。


歳なんて関係ないようだ。


邦彦兄と理一の絡みが一時間続いて、理一を強制的に部屋に連れて行って、夕食はお開きとなった。




侘助はいつの間にかいなくなっていた。

人との関わりを避けていた。



私は心配で、その日は侘助を理一の部屋まで連れて行き、三人で一緒に寝た。
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