サマーウォーズ
□第五章
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春になった。
髪は腰のあたりまで伸びた。
身長が130センチを越えたと喜んでいる間に、邦彦兄は信州大学へ。
直美姉は長野大学へ。
理香姉は東北大学に行った。
理香姉と直美姉、邦彦兄が家を出ていき、陣内家は寂しくなった。
聖美姉は高校一年生。
克彦兄は高校二年生。
侘助と理一は高校三年生。
私は出来るだけ陣内家に行かずに、自分の部屋で勉強したり、おばあちゃんから着物の帯の結びかたやお茶の作法を学んだ。
理一と侘助には相変わらず可愛がってもらった。
でも受験だということで、夏の時のように頻繁には遊びに行かなくなった。
私も成長したのだ。
そして夏に。
いきなり。
じいちゃんが死んだ。
じいちゃんは結構な人脈があったらしく、葬儀にはたくさんの人が来た。
父は一度も顔を出さなかった。
じいちゃんと父は血がつながっていないそうだ。
ばあちゃんは戦争で旦那をなくし、今のじいちゃんは父が生まれた一年後に結婚したから本当の子供じゃないんだって。
私は泣いた。
ずっと泣いた。
葬式の時、侘助と理一が何も言わずに頭を撫でたりしてくれた。
でも、私はただ泣いていた。
一人になった気がした。
朝起きたらじいちゃんがいないことが耐えられなかった。
一か月間ずっと家に閉じこもった。
一か月間陣内家に行かないなんて初めてのことだった。
侘助が心配して家に来た。
でも私は会おうとしなかった。
そしたら侘助は理一を呼んできた。
私の部屋まで入ってきた。
私は薄い毛布にくるまって、押し入れの中にいた。
最初、部屋に誰もいなくて二人とも驚いていたけど、侘助がすぐに見つけた。
私は毛布から引きはがされ、理一に抱きしめられていた。
温かかった。
理一は生きていた。
心臓が動いていた。
生きていた。
侘助は私の部屋のドアを開けて掃除をし始めた。
一か月間、水とごく少量の食べ物しか食べなかったのだ。
それに、ずっと部屋に閉じこもっていたから掃除もしていなければ、日の光も浴びていない。
たまに風呂に入ったが、それも三日前のことだった。
私はお風呂に理一と久しぶりに入って、何度も体と髪を洗った。
理一は何も言わなかった。
でも、受験で忙しかったから14時には帰った。
「頼んだぞ。」
侘助にそう言ってから家を出た。
二人が来てくれたことは涙が出るほどうれしかった。
侘助は蓮根を持ってきてくれた。
おばあちゃんが料理してくれた。
おばあちゃんは昔から覚悟してたらしくて、二日で立ち直っていた。
侘助に食べさせてもらいながら、一緒に凍らせたチューペットを食べた。
「侘助。」
「あ?」
「明日、泊まりに行っていい?」
「理一に伝えとく。」
「うん。・・・ありがとう。」
縁側から聞こえる蝉の音はとてもうるさかった。
「ねえ…今からでもいい?」
「…ああ、来い。ずっとそばにいてやる。」
蝉の声がやけにうるさかった。