サマーウォーズ


□第二章
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私はばあちゃんと歩きながら陣内家を目指した。


本日は土曜であり、休日なら子供たちは早く家に帰るだろうと、栄から電話があったのだ。


10月なので肌寒い気もするが、そんなの6歳のゆかには関係なかった。


おばあちゃんはいつもの着物を着て、私はお気に入りのキュロットスカートをはいて、侘助に会う気満々だった。



しかし、ゆかの背には昨日はなかったおばあちゃんお手製の、リュックサックが担がれていた。


ゆかは6歳。


このくらいの歳の子はもう小学一年生として、学校に通っているはずだ。


しかし、ゆかは怖くて行きたくなかった。

そんな孫を、おばあちゃんは優しくしてくれた。

でも、勉強をどうしようか、陣内栄に相談すると、栄は家のものが教えてくれるといった。それと、泊まっていかないか?と。



おばあちゃんはそれに甘えることにしたのだ。

ゆかにいい経験になるかもしれない。そう思ったのだ。




おばあちゃんは勉強道具を入れるリュックサックを作ってくれた。

近くに布を扱っている店はなかったので、ばあちゃんの着なくなった昔の洋服を使って作ってくれた。


しかし、洋服といってもとても地味なもので、勿論、私のリュックサックも、6歳が好むようなものじゃなかった。



当然、まだ幼い私はこのリュックの出来にぶすくれていた。



おばあちゃんは何度も「ごめんね。」と謝ってくれた。

弁解するようで見苦しいが、私は幼かったのだ。



陣内家につくと、栄ちゃんともう一人40歳くらいの女の人と一緒に迎えてくれた。



私が栄ちゃんに抱き付くとおばあちゃんは安心したように家に帰っていった。


おばあちゃんは手先が起用なので内職の和服の小物を作っているので、おばあちゃんは忙しいのだ。


私は栄ちゃんの部屋に連れていかれ、陣内家の家系図を覚えさせられた。


勉強よりも人の名前を覚える方が大事だと言った。



私は家系図を見ながら、栄ちゃんの話を聞いていた。



今、栄ちゃんの孫のほとんどが中学校、高校生で部活に行っていた。



成人している雪子さんという人は上京していた。



栄ちゃんの息子さんのご長男、雪子さんのお父さんは何年か前にお亡くなりになったそうだ。
栄ちゃんの娘の長女の万里子さんは栄ちゃんと一緒に暮らしている。


とても優しそうな人で、私を見るなりニコニコ
していた。



栄ちゃんの孫に当たる、万里子さんの娘さんは理香さんは17歳。


テニス部の部活で今いない。


生徒会の仕事もしているそうだ。

でも、生徒会と言うのがよくわからなかったけど、みんなの上に立つ、すごいことをやっていると栄ちゃんに教えてもらった。




息子さんの理一さんは16歳。柔道部の部活で今いない。


栄ちゃんの息子さんの次男の万助さんは、新潟で水産業の仕事をしているそうだ。



水産業というのがわからなかったが、イカをつっているのだと教えてもらった。


新潟にいるから、向こうで寝泊まりをして、一週間に一、二度帰ってくるのだそうだ。



そして、万作さんの長男の太助さんは20歳。


離れた町の電気屋さんで働いているそうだ。


会社は陣内家。


自分で会社を起こしたというのはすごいことらしい。



で、長女の直美さんは17歳。


とても派手好きらしく、今日は東京のことをよく知っている友達の家に行ったそうだ。




万助さんの次女の聖美さんは14歳の最年少。

バレーボール部の部活中で今はいない。


栄さんの息子さんの三男の万作さんは、医者の内科医として、隣街まで働いているそうだ。



万作さんの長男の頼彦さんは救命士の資格を勉強するために家を出たそうだ。



夏休みやお盆に帰ってくるそうだ。


栄ちゃんが嬉しそうに言った。



で、次男の邦彦さんは17歳。


陸上部のエースとして、今は部活中でいない。



三男の克彦さんは15歳。


野球部の部活中で今はいない。



いろんなことが書かれた紙を栄ちゃんと一緒に午前中一杯使って仕上げた。



「お母さん。お昼にしませんか?」


えーと、万里子さんがそう言って栄ちゃんの部屋には入らず、呼びかけた。



「ええ、そうします。ゆかも一緒に食べましょう。」



「うん!でも…。」


「どうしたの?」


「わびすけは?」


そう言うと栄ちゃんは優しく微笑んだ。


「さっき、侘助はこっちに来たよ。でも、ゆかが真剣に覚えているところを見て、声を掛けなかったんだ。」



「え?侘助と会っていたんですか?」

万里子さんが驚いたように私を見た。



「ええ、気に入ったみたいでね。万里子さん、侘助も来るようにと。」


「はい。わかりました。」


「まりこ…さん?」


私が自信なさげに万里子さんの名を呼ぶと、万里子さんは暖かい笑みをこちらに向けた。


「万里子おばさんで、良いですよ。あ、おかあさん。冷たいのと暖かいのどちらが良いですか?」


「暖かいので。」


「はい、わかりました。」


そう言うと、万里子さん。

否、万里子おばさんが部屋から出ていった。
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