イケメン王子のおっしゃるままに


□ちゃんと見つめなきゃ
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私は何がどうなったのか分からず硬直した。
けど自分の唇を伝って徐々に現実を理解した。
タカヒロの薄めの唇は想像もつかないほど柔らかくて、そしてタカヒロの舌が優しく侵入してきた。
無抵抗だった私もタカヒロの大胆な行動に合わせるように少しだけ意思表示をしてみた。




4・5分はキスをしていたと思う。
唇が離れてからはタカヒロの顔を見れるはずもない私はうつ向きながら戸惑った。









タカヒロ『ミノの唇やわかかったぁ(*^^*)』




くそーッ!私と全く同意見だぜ(照)と思っていたらタカヒロがいきなり立ち上がって駅とは逆方向に歩き出し『あっちに行くぞ〜』という感じに目配せをしてきた。
ついて行った先には飲み物の自販機があって









タカヒロ『寒いからおごってやるよ(^O^)』









実乃果『ホントにぃ!ありがとぉ♪
じゃー私はボ○のカフェオレ〜。
これ超好きなんだぁ♪(≧∀≦)ツ 』




と軽くタカヒロをバシバシ叩きながら買ってもらった。
タカヒロも私もいつもの感じに戻って笑った。
缶コーヒーを飲みながらお互いの今日の予定や次の出勤日の話をして和んだ雰囲気のままそれぞれの家へと帰っていった。


私は家に着いてからも有頂天だった。
タカヒロのキスを思い出してはニヤニヤと恥ずかしさをリピートし一人布団の上で身悶えていた(笑)
けれどもゆっくりながら現実に突き付けられた疑問が私を襲ってきた。




実は私がメールで告白をしてから今日に至るまでの数日間でタカヒロが私にあまり興味がない事に薄々気がついていた。
それは3日も出勤日が被っていたにも関わらずタカヒロからは何のアプローチもなかったからだ。
告白されて嬉しいとか、ミノと本気で付き合いたいと思っていたら出勤が被った1日目に呼び出してきたはず。
なのに何事もなく1日目が終了。
2日目も何の音沙汰もなかった。
だから3日目の出勤の終わりまで私は様子を見ていた。


前のページの補足をすると、3日目が終わろうとしてもウンともスンとも言ってこないからバイトが終わるころを待って私から『これから会いたいんだけど…ダメかなぁ?』と催促メールを打ったのだ。
メールを送ったときのタカヒロはというと電車で通勤している仲間達と共に駅に向かって帰ろうとしていた。
そこを私が呼び止める形となったのだ。
そのときにタカヒロが言ってくれた『バイト先でもある私の地元で会った方が(お前が)帰りやすいだろう』の言葉も内心はそーじゃなかったのかもしれない。
下手に私と移動をしたらバイバイした仲間達に目撃されてしまうかもしれない。
そしたらアサコに伝わって不安を与えてしまうかもしれない。
だから地元でいいと言ったとも考えられる。


結果タカヒロからアサコの事が忘れられないと告げられる。
私に興味がないから先延ばしの返事になったワケで、むしろ迷惑だったからこの際無かったことにしたかったのかもしれない。
どちらにせよ私がアサコに負けたのは事実…。
なのになぜキスをしてくれたのか全く意味が分からない。
私の頭の中はグルグルしていた。


付き合ってもいない人からのキスは初めてのことでそれだけでも理解不能なのに、ましてや大好きなイケメン・タカヒロからあんな形でキスをされたら……小さな望みを持ってもいいの?と勘違い虫がニョキッと顔を出してくる。
けれどもタカヒロが言い放ったアサコへの気持ちは紛れもなく本心だと思う。
だからアサコと次に別れるまで私に出る幕は完全にないって事も分かっている。


だったら……タカヒロとアサコのことを最後までちゃんと見届けよう。
例え二人の別れに何年掛かろうともアサコとの恋を決して邪魔はしないと心に誓った。
私にとってすごく辛い決断だけどタカヒロが私の前から姿を消してしまうリスクを考えたら友達のままで待っていた方がいいと思った。


やっぱりアサコがうらやましいよぉ……。
あんなにタカヒロに想われているなんてズルい。
相手があのアサコだからこそバイト仲間にも相談はできない。
ちゃんと人間関係を築いてこなかった私に味方になってくれる人がいないって事も十分に理解している。
自分で招いた孤独とも闘い一人声を殺しながら泣いた。




そんな複雑な心境を秘めつつもタカヒロの最後の出勤日は着実に近づいていった。
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