イケメン王子のおっしゃるままに


□ちょっと振り返ってみた
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それはやはり二人がまだ居酒屋でバイトをしていた時のことで私がバイトを始めて半年が経った辺りから頻繁に訪れた。
出勤して制服に着替えたら決まって『おはようございます、○○(←名字)です!本日も一日よろしくお願いします!』と誰しもがキッチンスタッフに挨拶をしてから手を洗浄するという習わしがあるのだけれど、タカヒロが前半・後半を通してバイトをしているときに私が後半から出勤してキッチンスタッフに向けて挨拶をすると決まって









タカヒロ『おぅ、おはよ!
ミノ、おはようのキスは?(^O^)』




と私の前に立ちはだかり毎度茶化してきた。
私はそれをはね除け『うるさーい!www』とか『はいはい、分かった分かった(照)』と言い放ちながら手を洗いサッサとキッチンを出ていくのだった。
私はすでにタカヒロ王子に胸を撃ち抜かれていたのでそのやり取りが本当に恥ずかしくて顔を見られないでいた。
その時期にアサコとタカヒロが付き合っていたかとかアサコが出勤していたかとかまでは記憶にはないのだけれど他のスタッフがいる前でまんまと見せ物にされていた。
今思えば私がタカヒロを好きなことはこの時点で皆にバレバレだったワケで、このことがアサコの耳に入っていたとしたら私をイジリたくなるのも無理はないのだ。




そして私がタバコを始めた後もからかってくれる節が見受けられた。
お互いラストまで仕事をした日のこと、くつろぎタイムになっていたときに私も皆の近くで一緒にタバコを吸っていた。
丁度そのときにタカヒロのタバコが切れていて









タカヒロ『ミノ悪い、タバコちょうだい。』




と言ってきたから









実乃果『うん、いいよ(^^)』




とタカヒロに箱を渡そうとしたら私の吸い掛けのタバコを取り上げ2口ばかり吸ってそれを返してきた。


なにーーぃ!
タカヒロ自ら間接キスをしてきただとぉ!?
んで、こ、このタバコを私にどうしろと言うのだぁ!!?(・ω・;)
まだ半分くらい吸える長さだし私が残りを吸ってもいいのですかぁ!!
つーかこれは遠回しに『俺様の下僕になるための儀式』なのかぁ!?
えぇ、イケメン王子が望むのならばワタクシの命の一つや二つ差し上げますともぉぉぉ!!
つーか記念のコレを持ち帰って神棚に奉納したいですぅ!!
と天にも上る気分でいたのだけれども面には出せるワケもなく気丈に振る舞いながらも震える手でそのタバコを吸い切った。
勿論持ち帰れるはずもない吸い殻は名残惜しみながら灰皿に捨てた。




……。


……………。



てめぇ!こんなやり取りだけでよくイケメン・タカヒロに告白しようだなんて思ったなッ!て皆さま怒らんでくだされぇ。
勘違いの大バカ野郎て重々承知しておりますとも。
タカヒロにこんなことを話をしたら『ん?そんなことがあったのか?』と言われてしまいそうなほど鈍い光を放つワタクシですともぉぉ★
けれどもそれでもいいと思ってしまった自分がいるんです。
だってこんなワタクシにもチョロッとでも光を差してくれる瞬間があるワケで全くの0ではないしその事実だけで十分満足しちゃってるんですぅぅ!
ワタクシの全細胞たちがお祭り騒ぎなのだからもうどうしようもないんですよぉぉぉwwwww
こんなアホな私に掛かれば小さな出来事も大きな希望に変換される。
全くいい意味で前向きなワタクシメだった。
イケメン・タカヒロからしたら全く興味がない存在にせよ太陽の周りをせっせかと回っていればいつかはちゃんと気がついてくれるだろうと思いながら今日も小さく小さーく健在している実乃果星だった。




懐かしくもあり、自分の存在感を再確認した私は
●清く
●いさぎよく
●ライトに
の三ヶ条を掲げタカヒロにメールを送ると決めた。
そして
●絶対に迷惑を掛けない。
●煙たがれてはいけない。
●聞き分けのいい子でいなければならない。
を念頭に改めて身の振る舞いも誓った。
勿論こちらからはお誘いメールなんていうオコガマシイ物も送らないと決めた。
イケメン・タカヒロの存在は私にとってそれだけ絶対的すぎるものだった。
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