タイバニネタ(没)
□Lost love
3ページ/4ページ
【side.bunny】
普通の日々を過ごしていた
毎日ヒーローとしての業務やテレビや取材を受けたりと目まぐるしい日々だった
イルはそんな僕のスケジュールをきっちり管理して毎日朝早くから夜遅くまで働いていた
本当にできたマネージャーだとしみじみ思う
けれどいつからだろう、イルの様子がおかしくなったのは
特に大きな予兆があった訳ではない、ある日突然いつものイルが“いなくなった”
前日まで普通に一緒に仕事をしていて、次の日休みだから、と申し訳なさそうな顔をするイルに『大丈夫』と伝え別れた数日後変わり果てたイルを見つけた
虚ろな瞳ですべてを怖れるその姿は出逢ってから今までで一度も見たことのない姿だった
『…イル?』
恐る恐る名前を呼ぶと身体を大きく震わせ震えた唇で小さく声を漏らす
いても経ってもいられず強制的に自分の家へ連れて行きそれからずるずると続いている関係
落ち着いた頃ようやくまともに口を開いたイルと会話をしてわかった
彼は全てを失ったのだと
「よぉ!バニーちゃん!!」
「ぁ…おはようございます虎徹さん」
後ろからぽんっと肩を叩かれ振り向くと相棒である虎徹さんの姿
にこやかな笑顔で衣服から随分といい香りを漂わせてる姿はとてもアラフォーには見えない
そんな相棒と共に社内を歩くと彼は懐から形態を取り出しアルバムを開く
「見ろ見ろ〜これ楓が作ったんだぜ!」
自慢げに見せてくるのは夕食だろうか?様々な料理の画像だった
「楓ちゃん腕あげましたねぇ…」
「だっろー?やっぱあいつは友恵に似たんだなぁ!」
俺はチャーハンくらいしか作れねぇし、と笑う虎徹さんを見ていると口元に笑みが浮かんだ
「ところでバニーちゃん、今日は随分とゆっくり出てきたんだなー」
「えぇ、今日はイルとゆっくり話してきましたから」
笑みを浮かべたままそう話すと虎徹さんは急に足を止め不思議そうに首を傾げた
「虎徹さん?」
「いや…あのさ、イルってバニーの親戚かなんかか?」
「は?何言っているんですか彼は僕達のマネージャーじゃないですか」
寝ぼけたように変なことを言い出す虎徹さんを訝しみながらそう続ける
確かに数日は休んでいるが彼はちゃんと在籍もしているしもちろん虎徹さんだって随分仲良くしていたはずだ
イルの状態がおかしい時にそんな冗談を言うなんて…そう思い虎徹さんの心意を問おうと見つめるも虎徹さんもふざけているわけではないといった表情で僕を見つめた
純粋に不思議そうに尋ねる虎徹さんに背筋が凍った
まさか…
「あっ!おい、バニー!!」
制止の声も振り切り僕は急いで執務室へと走った
「なんでだ!」
バンッと机を叩きつけ僕は目の前の画面を見つめる
アポロンメディア在籍者名簿からイルの名前がすっぽりと抜け落ちていたのだ
まさか、そんな…そう思いロイズさんやよく仲良くしていた斉藤さん、ベンさん…すべてに尋ねるもまるで“初めからいなかった”かのようにみんな口をそろえそんな人物は知らない、と告げた
呆然と立ち尽くしていると心配そうな表情を浮かべた虎徹さんが僕の顔を覗き込んだ
「マーベリックのこととか色々あって疲れてるんじゃないのか?この頃休みも取ってなかっただろ?
早退したらどうだ?」
特に事件という事件もないしなーなんて笑っている虎徹さん
いやいや、これは大事件じゃないのか?
混乱する頭では何もできないと思い、今日はありがたく早退させてもらうことにした
そういえば早退するの久しぶりだな…そんなことを考えながら帰路を急いだ
これは夢なのだろうか…
.